見出し画像

キレイ?うるさい?――鳴き声のせいで翻弄された運命を背負う鳥

ピンぼけの写真でごめんなさい。この茶色の鳥をご存じですか? 大きさは奥にいるハトと同じほど、目の周りに歌舞伎の隈取のように白い毛が生えているの特徴です。

この鳥と初めて遭遇したのは、ある晴れた朝、林を通り抜けたときのことでした。なんとも賑やかで多彩な音色のさえずりが聞こえ、きっと知らない渡り鳥が迷い込んだろう、と辺りを見回しましたが姿は見えず。鳴き声をスマホで録音しておきました。

しばらくたって忘れかけていたころ、あのさえずりに似た声が、今度は住宅地のどこからか聞こえてきたのです。似ているけど少し違う声。きっと近所で九官鳥でも飼っているのかもしれないと思うにとどまりました。

3度目は畑の広がる田園地で。遠くのほうから響き渡るあのさえずりをとらえました。もしかしてハマヒヨドリ? ハマヒヨドリはイソヒヨドリとも呼ばれ、最近、海岸以外でも生息地を広げている鳴き声の美しい鳥です。鳴き声の音色が多彩なので、ちょっと変形したバージョンで鳴いているのかもしれない、とむりやりこじつけてみたりもしました。。

そうしたことが一年を通して何度かありました。これは偶然やってきた渡り鳥でもなければ、籠のなかの九官鳥でもない、ましてハマヒヨドリにしてはさえずりが多彩すぎる。いつか正体をつきとめてやりたい、とそのチャンスを心待ちにしていました。

そしてチャンスは思いがけずやってきました。どんよりとした空模様の梅雨のある日、いつもの朝の散歩をしていたら、自動車のミラーを眺めては飛び跳ねる見知らぬ鳥を発見!! 柵にとまったところをスマホで撮影。家に帰って「目の周りが白い鳥」とググって、鳥の名前をつきとめました。名前がわかったところで、鳴き声が多彩とあったので、もしやと思い、ユーチューブで鳴き声を探してみると、1年以上正体を探していたあのさえずりの主だったことが判明したのです。

さて、この鳥の名前はもうおわかりになったかもしれません。そう、これは野鳥図鑑にはなく、日本では生息すべきではない外来生物。その名も「ガビチョウ(画眉鳥)」です。国立環境研究所によると、もともとは中国南部や台湾、ベトナム北部に分布し、日本には江戸時代に輸入した記憶があるが、1980年代に北九州で初めて観測された、とあります。いまでは特定外来生物に指定され、あまり歓迎されない鳥なのです。

鳴き声がキレイだと日本に持ち込まれたのに、うるさすぎて手放したものが野生化したのでしょうか。在来種への悪影響もとりざたされていて、もはや害鳥扱い。その鳴き声のせいで翻弄された運命を背負う、なんともかわいそうな鳥なのです。


いいなと思ったら応援しよう!