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シクラメンのかほり。 (歌詞考察)

トップ画像は私が育てて、かつての職場に置かせてもらった白いシクラメンです。

まずはこちらを聴いてみてください。小椋佳作詞作曲、シクラメンのかほりです。歌唱は布施明さん。昭和の大ヒット曲です。

1975年に布施明さんが歌ったシクラメンのかほりですね。

シクラメンの花にはかほり(香り)つまり匂いがないとされています。

匂いのない花の香りを恋人との切ない思い出になぜ、重ねてあるのか?この歌がヒットしたのは私がまだ小学生でしたが、高校生の時にあらためてラジオから流れてきた「シクラメンのかほり」を聴いて深読みしたことがあります。

先日、R氏とこの歌をYouTubeで聴いていてR氏の質問に私が答えていながらあらためてまた歌詞の意味について考えてみました。

シクラメンは冬場に市場に出回る花で、よく見かけるわりに年を越して同じ株からまた咲かせるにはちょっとコツがいる花鉢です。クリスマス前にお花屋さんで見かけますが。  
匂いは確かにありません。 
    ・・・
真綿色したシクラメンほど清しいものはない

清しい。清々しい、とはちょっと違う気がするのは私だけでしょうか。すがしい、って響きは清々しいよりも奥ゆかしくて涼やかな感じがします。
真綿色?ってどんな色なの?って聞かれて、私は純白、純潔な意味合いの綿みたいな真っ白。白無垢綿帽子の色、と答えました。

シクラメンのかほりはずばり別れの歌ですが、別々の道を歩きだしたのか、それとも彼女はすでにもうこの世にいないのか、っていろいろ想像してしまうんです。

出逢いの時の君のようです
ためらいがちにかけた言葉に
驚いたように振り向く君に
季節が頬を染めて過ぎていきました

匂いのない花。シクラメンのように美しい清らかな、香水などつけてなくても匂いたつようなそよ風のような女性との出逢いと恋をして逢瀬を重ねた季節が何度かやってきたときの流れを感じます。美しい表現ですね。さすが、小椋佳さん。匂いがない花なのでイメージとしては素顔も綺麗な清らかな乙女を連想します。すがしい、って私はそう考えるのですが。

二番はこう続きます。

うす紅色のシクラメンほどまぶしいものはない
恋するときの君のようです……

うす紅色。
ピンク色ですね。
どんなピンクだったんだろうか。恋するときの君。頬が染まる桃色みたいなピンク色のシクラメン。

疲れを知らない子供のように
時が二人を追い越して行く 
呼び戻すことができるなら 
僕は何を惜しむだろう

かつて抱きしめた愛しい女性の面影をシクラメンの花びらの色に喩えて。

疲れを知らない子供のように、は、子供って時間を忘れてはしゃぎますよね。あっという間に楽しい時間が過ぎていくから長いようで短いようで恋する時間は不思議なものです。

だけど、ここですでにこの恋人たちは離ればなれになっているのだ、と読めるのですね。

呼び戻すことができるなら って。もう一度その女性との時間を取り戻せるなら何を失うことも怖くない、ただ彼女との時計を巻き戻したい、なんにも、なんにも惜しくはない……。   そう聞こえます。

切ないラストの章。

三番。

うす紫のシクラメンほど
淋しいものはない
後ろ姿の  君のようです………

歌詞に「暮れ惑う街の」と続くのですが。
暮れゆく空の色かもしれない。別離の淋しさに青ざめた彼女、そして主人公の彼の顔色かもしれない。
真っ白な心が恋をして紅く染まり、萎れていく恋心がまるで花が終わり、うなだれたシクラメンがだんだんくすんでいくみたいに思えるんです。

彼と彼女が生き別れなのか?それとももはや抱き締めることができない世界に彼女がいってしまったのか。
別離の言葉はどちらからなのだろう。切なくて泣きたくなります。

真綿色のシクラメン。初恋なのかもしれません。恥じらう恋心がいつの間にか色づいて紅く染まりそして紫に萎れて散る。

疲れを知らない子供のように……リフレインされるフレーズ。

恋が始まった時。
それは駆け足みたいに過ぎ行く毎日が惜しくて。会いたい、逢いたい、次はいつ逢える、そして逢えばあっという間にその逢瀬の時間は残酷に過ぎてそれぞれの家路につくものです。また逢いたい、逢いたい。愛に変わっていく微妙な時間は必ずしも幸せな結末だとは限らないのです。

そろそろお花屋さんの店先にシクラメンの鉢がたくさん並びだしました。

シクラメンの香り、でなく薫りでもなく      かほり、と書かれてある言葉が匂いのないシクラメンの凛とした姿に似合うように感じます。初恋が儚く散る時、同じような想いをした人は少なくないのではないかと思うのです。

ハロウィンなんかマイナーだった時代の歌です。
街角で見かけるかぼちゃの飾り付けの横に並ぶシクラメンの花の鉢植え。


沁みるな。いい歌詞が。美しく儚い。なんで私、泣いてるんだろうな。

また今年も冬が、そしてまたクリスマスがくるんだな、としみじみ小椋佳さんバージョンも聴いてる寒い夜です。

          ゆー。

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姫崎ゆー
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