見出し画像

「絵本は大人へのメッセージ」 短編エッセイ

絵本が社会人となった大人へ
影響を与えることは少なくない
絵本はもしかしたら
鈍感になってしまった現代の大人たちへ
何かを気づかせる道しるべのような
そんな意味を持っているのかもしれない

きっと誰でも一度は大人になってから
何か影響を受けるような絵本に
出逢ったことはあるのではないか

私がここで紹介する絵本は
【すてきな三にんぐみ】
アメリカのアンゲラーという人の作品

自身も50歳を過ぎて久しぶりに
偶然な発見とも言うべき出逢いだった
ある日 何となく図書コーナーで
「海外の絵本」という見出しに吸い寄せられ
偶然手にしたのが この絵本だった

登場するこの絵本の三にんぐみは
泥棒というか
簡単に言えば窃盗団かつ誘拐犯だ
これは当たり前に今も重罪だが
最終的には三にんともすてきな天命を迎えることになる
---------------------------------------------------------
~物語りの説明~

この三にんは毎晩のように
夜道をいく馬車や人を狙い 襲う
そして金銀財宝を奪い取り
自分たちの住処へ運び込む

運び込まれた財宝は
山のように貯まるいっぽうだった

とある日のこと
襲った馬車には金目のものはなく
小さなどもが乗っていた
その子どもは 意地悪なおばさんの家に
預けられてしまう途中だった

子どもは三にんぐみにさらわれる方を選んだ
三にんぐみは大事に子どもを抱えて
住処へ連れて帰った

子どもは大切にされて
ふかふかベットで一晩明かして目を覚ました
目の前にある山のようなお宝を目にして
「まぁ これ どうするの?」
と子どもは三にんぐみへ尋ねた

問われた三にんは
顔を合わせて考え込んだ
盗み貯めたお宝の使い方など
これまで考えたこともなかったからだ

それから
三にんぐみは来る日も来る日も集めた
さびしく つらく悲しく 暗い気持ちで暮らす 捨て子やみなし子たちを何人も

そして住処の手狭な洞穴から
子どもたちみんなと一緒に暮らすために
大きなすてきなお城を買った
貯めた財宝を使って

みんなでお城に引っ越した
そしてそのうわさは国中に広まった
お城には国中の子どもたちがどんどん集まってきた

そして子どもたちはすくすく育ち みんな結婚した
お城のまわりには家が建ち やがて村になった
その村はどんどん大きくなった

そして みんなは
三つの高い塔を建てた

みんなのすてきな三にんぐみを
忘れないため

ほら ごらん
あの塔は 三にんにそっくりだ
--------------------------------------------------

はじめは悪党であり罪人だった三にんぐみは
最後はみんなに感謝され 忘れらない存在となり
社会の 町のシンボルとして 高い塔に祀られるようにして建てられた


この絵本に出逢って今 
自分は大切なことに気付かされた
最近は特にコンセプトやビジョンという言葉が あたかも前提とされる世の中の風潮で はたしてそれってどうなんだろうか

できるか できないか
それを検証して着手するものではなく
本来は
やるか やらないか
それだけのことではないだろうか

この絵本に登場する三にんぐみも
はじめは泥棒という悪党・罪人だった
だが偶発的な出来事によって
それが必然へと変わる
善なる行動になっていく

そこに はなからビジョンなどない
悪い行動がよい行動へと変化・変容した
悪い行いが偶然と必然により
世の中という社会への貢献的な行いに
自然と変わっていったのだ
三にんが意図したことではない

私は今
福祉事業を立ち上げようと考えている
できるか できないか ではなく
やるか やらないか だと思う

お金があるか 資金はどうするか
それは大事なことだと思う
三にんぐみのような財宝はない
当然 法に触れることはできない

でも
今私にあるすべてのこと モノ 
つながりや知恵を絞って 
障がい者と高齢者が安心して過ごせる
平和に暮らせる居場所を
どんなに小粒でもいいから
味のあるお城を
現代社会につくろうと思っている

ことを起こすのに 何か始めるのに
明確なコンセプトやビジョンは当然問われる昨今だが
でも それはどうだろう

本当にそれは当然なのか
絶対なのだろうか

求める人がいて
集まる人があって
必要とされる

そこから何かが生まれる
どんな形になっていくのかわからない
どんな事業形式にあてはまるのか
まったく読めない

それでも何かが生まれようとしている
それだけは自身の心の中で
静かに疼いているのは感じる

私はこの絵本と出逢って
説明のつかない勇気を与えられた気がする
ものごとはコンセプトやビジョンではないと
そう背中を押されたような気がするのだ

もしかして 
この絵本
「すてきな三にんぐみ」は
現代社会で生きる大人たちへ贈られたもの
無意識に忘れていることを気づかせる
何が大切かを思い出させる
そっと人の背中を押すような
そんな絵本だったのかもしれない
そんな風に思う


2024年7月21日





















いいなと思ったら応援しよう!