「怪力じいちゃん」 短編エッセイ
大岡川
実家のすぐ近くを流れる川
おじいちゃんの伝説がある
ある時 おじいちゃんをよく知る叔父から聞いた話だ
その叔父は生きている間に
おじいちゃんのことをすべて語り伝えておきたいと言って
長男の僕を代表として家に招いた
大岡川は上大岡 弘明寺 黄金町 日ノ出町と 京急線沿いに流れる
特に黄金町や日ノ出町はあまり治安的にはよくない?
昔ながらのチ〇〇ラ ヤ〇ザがいる地帯だ
その叔父いわく
とにかくおじいちゃんは強かったらしい
柔道家で相撲も負けなし
ケンカもヒクソンじゃないが負けなしだったらしい
ある日おじいちゃんが夕刻に大岡川沿いを歩いていると
提灯を片手に向かってくる自転車があった
おじいちゃんは夕涼みをしながら悠々と歩いていると
その自転車は正面からぶつかってきたらしい
相手はチ〇〇ラだったらしい
当時はかなり昔だ
懐中電灯やライトなどは普及していなかったらしい
提灯で暗闇を照らして歩く
自転車も提灯で先を照らして走る時代だったらしい
「おい!どうしてくれるんだ?」
と凄まれたのか定かじゃないが
確かに言いがかりをつけてきた相手に
おじいちゃんは無言でその相手を自転車ごと持ち上げて
大岡川にまるごと投げ込んでしまったらしい
その相手がどうなったのかは
その叔父も知らないらしい
たったひとつ残った提灯を拾い上げて
それを片手におじいちゃんは帰宅したという
しかしなぜそんなことがバレたのか
それは 行は手ぶらで出かけていったのに
帰りは提灯を持って帰ってきたから
おばあちゃんに「それ どうしたの?」
と問い詰められて発覚したらしい
その話を聞いて以来
私はたまに用事で大岡川沿いを歩くと
ふと おじいちゃんのことを思い出す
「どの辺だったのかなぁ~」
「結構柵が高いなぁ~ 本当にこの高さまで持ち上がるのかなぁ~」
などど 冷静に考えたりする
そんなおじいちゃんの影響か
自分も一度検証してみたいというか
試してみたい気持ちもあって
自転車ごとではないが
当時自身が所属する空手道場で
道場生を相手にその場面を想定して
検証してみたことがある
「人は持ち上がらない」
自分よりも小柄な相手でも
持ち上げられそうになると
必死にしがみ付いてきて私の体から離れない
私もベンチプレス120キロを上げる気持ちで
渾身の力を振り絞り 引き離そうとしても
持ち上げようとしても できなかった
人は必死になると とんでもない力を発揮するものだな…と
何かにしがみついたら離れないのだ
人の底力は恐ろしいものだと感じた
おじいちゃんの伝説は本当だったのか
自転車に乗る人間ごと持ち上げて
川に放り込むなど本当にできるのか
実話だったのか
未だに大山倍達の伝説のように謎だ
~追伸
当時叔父から聞いたおじいちゃんの他の話は 聞いていても途中から眠くなってしまい 全然覚えていない
2024年7月14日