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現代アート06-A 渡辺好明




作家情報

  • 1955-2009

  • 日本

  • 現代アート

氏の代表作である、蝋燭の火や水を素材としたインスタレーション「光ではかられた時」は、静謐とダイナミズムを同時に併せ持ち、私達の生を鮮やかに照らしだす(映しだす)表現として今もなお深く記憶されております。
しかし、氏が私達に残したものは、それら美術作品だけではなく、長く東京藝術大学の教員として後進の指導にあたりながら、先端芸術表現科の体制整備に尽力し、ドイツの美術大学(デュッセルドルフ美術大学、バウハウス美術大学)との交流、取手校地を中心に様々なアートプロジェクトを起ち上げるなど、地域の文化育成にも多大な貢献をいたしました。
日本の現代美術に於いて重要な存在であるアーティストでありまた同時に優れた教育者でもあった氏が全身全霊で取り組み情熱を注いだ数々の作品と業績は現在も脈々と息づき、氏の作品の蝋燭の灯火のごとく私達を照らしております。

藝大フレンズ 「渡辺好明遺作展 | 光ではかられた時」 2024/12/30現在

紹介作品

光ではかられた時 - 階梯 -」1991-8月

美術手帳 1992年11月号 「特集 野外アートの饗宴」   Photo:黒川未来夫
美術手帳 1992年11月号 「特集 野外アートの饗宴」   Photo:黒川未来夫
美術手帳 1992年11月号 「特集 野外アートの饗宴」   Photo:黒川未来夫
Watanabe Yoshiaki ホームページ 2024/12/30現在
Watanabe Yoshiaki ホームページ 2024/12/30現在

導入

1991年に行なわれた白州・夏・フェスティバルのオープニングに点火された。

白州・夏・フェスティバルとは、1988年から舞踏家の田中泯の呼びかけにより、美術、音楽、演劇、舞踊、文学、伝統芸能、民俗芸能、建築など様々な分野の関係者が山梨県北巨摩郡白州町に集まって始められたもので、美術部門は、榎倉康二、高山登、原口典之などが中心となり「工作集団 風の又三郎」という美術家組織を作って参加した。多くの美術家が野外作品を様々な場所に制作設置していった。美術部門は95年に解散したが、フェスティバルは、田中泯、木幡和恵らのプロデュースによりアートキャンプ白州、ダンス白州と名前を変え、2009年まで毎年継続して開催されていた。

Watanabe Yoshiaki ホームページ 2024/12/30現在

※市原湖畔美術館で2022年に開催された[試展-白州模写 「アートキャンプ白州」とは何だったのか]の展示会場 約1分

素材

  • パラフィンワックス

パラフィンワックス(Paraffin Wax)は、石油、石炭、またはオイルシェールから精製される固体の炭化水素化合物。
〈特徴〉
外観 : 無色または白色の固体。光沢があり、ろうのような質感を持っています。
性質 : 水に不溶。油脂や多くの有機溶媒には溶ける。
融点はおおよそ40~70°C程度(種類による)。

Chat GPT  質問内容「パラフィンワックスとは」 2024/12/30現在
  •  灯芯

寸法

600 × 45 × 600(cm)

料金

計算により、およそ1800kg。
あぶら屋ヤマケイによると、1kgあたり約1300円(融点48℃)なので、
金額にすると234万円となる。
※パラフィンは融点が高くなるにつれて、値段が上がる。

あぶら屋ヤマケイ ホームページ
https://yamakei.b-smile.jp/products/list.php?category_id=242

2024/12/31現在

形状

休耕田の段差を利用した階段型で、南アルプス八ヶ岳に向かって延びている。約高さ3mまでは、休耕田の段差に沿う形で階段が設けられており、その高さを超えたところから階段が斜面とは独立して、段差の上面に設置されている。ただし、パラフィンワックスが燃えていくにしたがって、形状も溶け落ちていく。そして、傾斜により、下へと流れて、最終的には休耕田の段差の最下部に溶けた物質が溜まっていく。
直方体のパラフィンワックスの塊を積むことで全体をつくっている。

効果

【作者のコメント】
白州・夏・フェスティバル
この時・ その場においてこそ成立し、そこに立ち 会えた人びとと一度限りの体験を共有し うる作品 此処と何処?とを繋ぐ可能態としての階段
ヒトがヒトとなりえた、なってしまったそれ以来の人類の記憶を内蔵し、 かつ呼び覚ます火
それはまたすべて を燃やし尽くし、不可逆的に消し去ってしまうそれでも、まさに文字どおり 瞼に焼き付けられる事で、この作品は成就しえたと考えている。                                                美術手帳 1992年11月号 「特集 野外アートの饗宴」

制作方法

正午にレンズで太陽の光を集めて得られた種火を用いて、日没を待って点火された。道を隔ててフェスティバルのメイン会場であった巨麻神社では、田中泯観世栄夫の競演など多彩な演目が進められる中、階段全体に及んだ炎は次第に火力を増し、自ら風を起こして、火の竜巻きのようになって夜空を焦し始めた。斜面をつたって滝のように流れ落ちる鑞は、初めは澄んだ池のように溜まって燃える階段を美しく映し込んだが、やがては周囲の畑全体に溢れ出して、鑞の湿原のように広がり、ついにはそこにも着火して、辺りは火の海と化していった。フェティバル関係者や観客も加わっての懸命な消火作業により、無事に火は消し止められ、延焼、大事に到らずに済んだのは幸運としかいいようがない。火のもつ威力、恐さをまさに身を以て痛感させられた作品である。

Watanabe Yoshiaki ホームページ 2024/12/31現在

関連作家

  • 田中泯(振付師、ダンサー)

引用まとめ

  • Watanabe Yoshiaki ホームページ 2024/12/30現在

  • 美術手帳 1992年11月号 「特集 野外アートの饗宴」

  • 市原湖畔美術館 「試展-白州模写 「アートキャンプ白州」とは何だったのか」                 2024/12/30現在

  • あぶら屋ヤマケイ ホームページ      2024/12/31現在


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