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現代アート08-A 岩田草平
作家情報
1979年生まれ 滋賀県出身。2000年東京芸術大学先端芸術表現科入学。2007年同大学大学院卒業。2008年度より文化庁新進芸術家海外研修員(2年)として、インド西ベンガル州のサンティニケタンへ留学。さらに2010年から2012年まで吉野石膏美術財団、ポーラ美術振興財団などの助成を受け、活動を継続予定。主な活動として「サラエボ国際文化交流」代表。「アートという戦場」(フィルムアート社)に執筆。オランダ、ドイツなどで発表多数。
インドの少数部族であるサンタル族やコラ族と共にプロジェクトを行っているアーティスト岩田草平。サンタル族やコラ族はインドの不可触賎民として今なお差別を受けているが、同時に現在でも美しい原始的な生活を残しており、原始の人間生活を垣間見ることが出来る貴重な存在でもある。
岩田は彼らの伝統技術や風習などを研究しながら、農村向けの環境共生住宅やきれいな水を飲むことできる浄水塔などをデザインし、実験制作をしている。
紹介作品
「珍客亭」 2013年
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導入
森美術館主催の「六本木クロッシング2013展:アウト・オブ・ダウト」で紹介される。
日本のアートシーンを総覧する3年に一度の展覧会シリーズ「六本木クロッシング」。4回目となる本展では、東日本大震災以降明らかに高まっている社会的な意識を反映しつつ、日本の現代アートの「いま」を、歴史やグローバルな視点も参照しながら問いかけます。これまでのあらゆる社会通念や既存の制度に向けられた疑念(ダウト)から、アートを通じてどのような生産的な議論を生み出せるのでしょうか?1970〜80年代生まれの若手を中心に、世代の異なるアーティストや在外/日系アーティストも含む29組の芸術的実践を通して、先の見えない日本の次のステージにどのような風景が見えてくるのか、観客のみなさんと一緒に考えたいと思います。
素材
六本木ヒルズ内の毛利庭園
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少数民族サンタル人 5名
インドの詩聖であり、アジア人として初めてノーベ ル賞を受賞したラビンドラナート・タゴール (1861-1941) は「自然と共生するサンタルの生活に私たちは学ばなければいけない。」と唱えました。 インド最大の同族コミュニティですが、バングラデシュ、ネパール、ブータン など近隣諸国にも住ん でいる。彼らの文化は口承、歌、儀式で維持、伝承されています。インドの貧困コミュニティの一つ と見なされているが、素朴、正直、平和 的、陽気な性格の持ち主で、独特の米ビールを好み、冗談好 きです。その宗教はアニミズム的で、祖先の霊、家の霊、村ごとに保存されている原始林の霊な ど、 霊魂(ボンガ)は至るところに存在します。
サンタルの伝統工法+アースバック工法
寸法
4000×4000×4000(mm)
効果・意図
「インドの少数民族サンタル人との活動を通して近代化や都市化の意味を再考させる。」
「近代社会における自然と人間の関係に焦点をあて、 現在も自然と密接した生活を営むインドの少数部族(サンタル族)、日本人が共同で作品を制作するこ とで、本当に平和な社会のカタチを追求していくことを目指しています。」
「エネルギーと生活、自然と文化芸術についての実験的試みを行 い、近代社会における「新しい村」の形をインド少数民族の人々と共に模索してきました。」
伝統的建築構法について
サンタル族の伝統的建築工法では“土”がメインに使われています。彼らの家の壁面は殆ど土のみで つくられています。 制作の工程はまず地面を 30cmほど掘り込み、そこへ水を流し込み地面を固くします。そこから一回 30cmほどづつ土と藁と牛糞を混ぜて練ったものを積み上げていきます。直射日光が当たることが重要で、直射日光によって土が乾燥し固くなったら次のレイヤーを築きます。およそ3日に一度 30cm づつ積み上げていくこととなります。日常の農作業等の間などに、少しずつレイヤーを重ね、壁を築いていきます。その後、竹で張りや屋根の構造を組み、藁を敷いて屋根を完成させます。床には“グリ”と呼ばれる牛糞と墨をまぜてつくられる伝統的塗料が使われます。これには彼らの神様“マランブルー”が宿るものとされていて、サンタルの女性は毎日このグリで床を磨きます。壁や屋根の補修 も、日常生活の一部として行なわれます。稲藁も、米を主食とする彼らの周りには常にある物で、収穫、脱穀のシーズンには綺麗に束ねられて形良く積み上げられています。また稲藁を編んだものをぐ るぐると大きく円柱状にまき、屋根をつけたもので収穫した米を保管しています。彼らの住環境は常 に清潔であり、 “家作り“と毎日の衣食住に伴う労働が1つのサイクルの中に完璧に組み込まれています。 現地には「ヒマラヤ下し」という暴風・突風が吹きますが、彼らの土建築はビクともしません。厚み 50cmの土の壁は非常に重厚です。雨を気を付けなければいけないのは屋根の部分です。真上から来 る雨にはかなりの圧力があり、トタンなどでも掘り込むほどです。よって屋根部分には茅や藁といったやわらかい繊維質の素材が有効なんです。逆に横からかかる雨には掘り込むほどの圧力はなく。庇 を長くし直接壁に雨がかからないようにすることで土の流れだしも制御することができます。水分は 積み上げた土壁をより固くするほどで、制作過程における雨は多少かけるぐらいの方が丈夫になしま す。
制作プロセス
1.土台をつくる。
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2.土を積み上げる。
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3.屋根の構造をつくる。
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4.壁の表面に牛糞のを加えた土を何層も塗っていく。
5.藁屋根を引き、壁に化粧塗りを施す。
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サンタルの伝統的工法と近代建築工法(アースバック工法)の融合について
アースバック工法とは、土嚢袋に土をいれたものを積み上げていくという、近年世界中で注目されて いる工法のことです。この工法を利用する事で、土を積み上げる作業の効率化をはかるります。また、 この工法をつかうことで世界中様々な地域の土を高く積み上げる事が可能となります。
制作プロセス
1.土嚢袋に土をつめる。
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2.積み上げながら構造を作る。
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3.上から粗壁用の土を塗る。
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4.屋根、軒をつくる。
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関連作家
三梨伸
大木祐介
引用まとめ
森美術館公式ブログ「1分でわかるアウト・オブ・ダウト~展覧会の見どころ(3)」 2025/1/2現在
マイノリティ アーティスト イン レジデンス 活動報告書 岩田 草平(Prominority 代表) コード番号:12-A-032 2025/1/3現在
株式会社SOHEI ホームページ 2025/1/3現在