海外事例研究 | コペンハーゲンのサイクリング都市化における交通データ利活用
はじめに
GEOTRAインターン生の伊藤です。デンマークのコペンハーゲンは「世界一の自転車都市」として知られており、快適なサイクリング環境の実現を目指して様々な施策が進められています。
本記事では、その中でも特に「グリーン・ウェーブ」に焦点を当て、交通データの活用によるサイクリストの利便性向上について紹介します。
コペンハーゲンの自転車交通
コペンハーゲンにおける自転車交通は非常に盛んであり、市民のおよそ62%が通期や通学などで自転車を利用しています。
1982年から2001年にかけて、自転車中心の交通インフラの整備が行われ、2000年代初頭からは自転車利用者にとって快適なまちづくりが行政主導で取り組まれてきました。
その中で注目すべき施策の一つが、「止まらない道路(グリーン・ウェーブ)」です。
このシステムは、自転車用に設定された速度で走行することで、赤信号の交差点で停止せずに通過できる仕組みです。
この施策は元々、自動車用のシステムとして1926年に導入されましたが、コペンハーゲンでは自転車に適用し、3本の主要道路で実施されました。
特に朝の通勤時間帯など混雑が予想される時間帯に効果を発揮し、自転車利用者のスムーズな移動を支援しています。
結果として、自転車利用者の速度変化の平均が、以下のグラフの通り確認されています。
グリーン・ウェーブの導入により、自転車の平均速度は15.1km/hから20.7km/hに向上し、自転車の速度の安定化が確認されている他、通勤や通学時間が約2割短縮されることが示されています。
加えて、交差点毎ごとの平均停止回数も6回から1回未満に減少したと報告されています。
このように、グリーン・ウェーブは自転車の魅力を相対的に向上させ、多くの市民の自転車利用を促進することに貢献しています。
また、コペンハーゲンでは自転車利用に関連する諸施策の導入前に比べて、2018年時点では、2005年対比で約40%のCO2排出量削減効果が確認されています。
更に、グリーン・ウェーブや自転車道の広大化、自転車に関する教育の広がりに伴い、自転車の利用者数と反比例して、事故数や怪我などのリスクは減少しつつあり、ヨーロッパの中でも最も自転車事故による死亡率が低い都市になっています。
交通ビッグデータを活用した、「グリーン・ウェーブ」の更なる進化
最近では、交通ビッグデータの活用により、「グリーン・ウェーブ」は更なる進化を遂げつつあります。
集団の感知
自転車利用者にとって便利なシステムとして、交差点での青信号の時間を調整する取り組みが進行中です。センサーを用いて集団の動きを感知し、5人以上の集団が近づく場合には、青信号を少し長く維持することで、自転車が止まらずに通過できるようになります。これにより、交差点での停止時間が減り、自転車利用者の移動効率が向上します。
グリーン・ウェーブの方向変化
リアルタイムの交通データを活用することで、主要道路だけでなく、他の道路でも交通の流れを最適化する試みが行われています。具体的には、各方向の自転車利用者の実際の数に応じて、グリーン・ウェーブの方向を変更することで、道路全体の交通効率を高めます。
交通ビッグデータを活かした導入可能性
グリーン・ウェーブは、コペンハーゲンを始めとした地域で導入され、ニューヨークを含む各地域でも実証実験が行われています。
例えば、GEOTRAの人流データを活用することで、道路利用者の交通パターンの分析が可能となり、さらに他のデータと組み合わせることで自転車利用者の需要増加に対応する駐車場の最適な設置場所の分析に取り組むことができます。
最後に
本事例では、自転車都市であるコペンハーゲンでの「グリーン・ウェーブ」の活用事例をご紹介しました。交通ビッグデータの活用によるサイクリング環境の向上を目指すことは、都市の持続可能な交通システムの実現において重要な一歩となります。
ここまでご覧いただきありがとうございました。
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