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【画廊探訪 No.121】魂を結ぶ紐を、ほどいては、又、編む――翁素曼、Gallery Face to Face新春企画『LIFE LINE』 出品作品に寄せて――

魂を結ぶ紐を、ほどいては、又、編む
―――Gallery Face to Face新春企画、
    グループ展『LIFE LINE』 翁素曼出品作品に寄せて―――
襾漫敏彦

『LIFE LINE』、「フェイス トウ フェイス」の新春企画、38人の作家によるグループ展が開催された。翁素曼氏も、個性的な作家の一人として、このグループ展に参加されていた。

 翁素曼氏は、中国から留学生として、東京の学校で立体造形について学んでいる。彼女は中国では、そもそも絵画やイラストを描いていたようであるが、平面表現から離れ、立体での表現に近づき、日本では木彫りなど物の形を扱う表現を学んでいる。昔の平面の作品を多く知らないが、くっきりした色の強さに支えられた表現から、物体の持つ質量感に、作品の重心をおきかえてきているのかもしれない。きっと、そこに彼女の格闘がある。

 頭の中で思い浮かべていたものを、画像として描いていた少女は、物体に想った表情をなぞるようにして、彩色をこすりつけるように形の表面を飾っていく。ものに想わされた香りをまとわせた形を、組み合わせて思いを新しい物語へとくみあげていく。それは、意味を含んだアトリビュート(持物)や象徴を組みあわせては制作する絵画や、様々な由来をもつ形式の品々を組みあわせては自由な空虚を想像する建築の作法に通じる。

 ライフライン、命綱。生命を支える連結。ライフ、そしてライン。生と生の間に引かれる線。それは、精神を刻々と輝かせる航路であり、ひとつひとつの魂をつなぐ連環でもある。
 造形の技術は、この土地には、水の道を通って大陸の沿岸から伝えられた。けれども、ラインは度々、切断された。その為、独自の展開をとげる。
 広大な大地では、造形は鮮やかではっきりした存在であった。それが、この地では、暗がりで展開する。故地より訪れた彼女は、ここで造形を編み直す。彼女も、一本のライフラインなのだ。


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翁さんの作品があげてあるページです

ネットでも翁素曼でしらべると色々と紹介された記事も見かけます。




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