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【画廊探訪 No.075】迷いの森の中で、世界の温もりを朝日に感じて ―――小野理恵展『内なる自然』(アートギャラリー羅針盤)に寄せて―――

迷いの森の中で、世界の温もりを朝日に感じて
―――小野理恵展『内なる自然』(アートギャラリー羅針盤)に寄せて―――
襾漫敏彦
 世界は様々な色で彩どられている。人は、それを見て心を動かす。詩人は言葉を紡ぎ、歌を唄う。画家は、それを画布の上で、形に表していく。けれど眼が見えなくなっても、喋れず動けなくなっても、そこにある世界は横たわる人を包む。そして、ひとは世界が語りかける恩恵の中で生きている。

 小野理恵氏は、風景の中で生きる表現者である。彼女は、美術の道を遠い夢として、普通の生活をしていた。人生の転機を経て、多摩美術大学の二部で、もう一人の自分と出会う。
 彼女の作品は、風景画である。それは印象派を思わせるが、外の世界の模写でも、自分の内面に映し出されたイメージでもない。舞踏する色の祭典は、目を閉じてさし伸べた手が触れる温もりのざわめきである。

 画家でもない普段の彼女は、理学療法士の仕事をしている。リハビリは、人生の失った部分を取り戻す行為であるが、それは自然との出会い直しである。そのひとつひとつの努力の傍らで手を添える彼女も、失った夢と出会い直しをした画家である。
 順調な進学をして大学の門をくぐった者には、技法、ジャンル、思想、世界観と無限に近い様々な道が広がる。と同時に、成功や失敗、期待や不安、未来の鏡に映し出された様々な姿に迷いやすい。けれども、何かをくぐって出会い直しをした
彼女は、欲望が見せる多くの道が迷いであることに気がついている。誰かと自分、互いに触れあうこと、それが彼女の日常であり人が生きる実存である。
 世界、自然、生態系との遭遇、その感触こそが彼女のテーマである。

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小野さんのウェブサイトです。



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