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展示感想:第十六回「工燈」高岩寺会館、新井達矢、田中俊成作品
第十六回、「工燈」感想です。今回は、面打師弟、新井達矢、田中俊成についてです。
新井達矢さんは、確か6歳から面を打ち始めたはずです。今、41歳くらいですか、職人としては、35年の経歴です。
黒住さんによれば、人間としての成長と、職人としての成長が、並行している今日では稀有な例だと言っています。
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自分で踊る神楽の面を自分で作りたいとして、その新井さんに弟子入りしたのが田中さんです。
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初めて若き師弟にお会いしたときは、二人ともまだ、三十代でした。
田中さんは、ここ数年、伸びてきて彼の面を打てるようになってきたようにおもいます。
能の舞台で使う新井さんの面と、屋外の陽光の中で扱われる田中さんの面は、自ずと違う方向へと進んでいきます。
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少しずつ師の枠組と異なる道を進んでいるのでしょう。
彼らと交わって十年弱ですが、二人とも人生の道をしっかりと歩んでいるようです。
田中さんのお子さんもスクスクと育っているようで、祭りの場所の風景であった子ども達が、自分の暮らしの一部として繋がってきています。そういう日常の経験が、モノの表現としての面から、ひとが着して面と共に生きるモノへと田中さんの面打ちの技量を育てているようにもおもいます。
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新井さんも伴侶を迎え、第一子を授かっています。パパ歴としては、田中さんが先を進んでいますが、面打ちとしては、ベテランでも、パパとしては、新人で、なかなか慣れないようです。
家庭を持っていろいろ変わったようですが、ふと気づく家人の表情の中に、古来より写された面の表現の意味を感じるようです。写しから、実際の体験に、面の表現を支える面打師の感性が、豊かになって行っているのでしょう。
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二人とも、これからが楽しみです。