サマリー画廊の楽しみ方ーーなんで画廊に足を運ぶのか【アート・エッセイ】6〜10
第六回
画廊の面白さのひとつは、オーナーの癖というべきものに触れることです。
わかりやすいところでいえば、阿佐ヶ谷にアートギャラリーOPPOというギャラリーがあります。ここは、オーナーが、以前は獣医師として動物病院をやっておられたので、動物を意匠としたものでやっています。
それでOPPOなんですが、オーナによると、動物をいためつけるような作品はキャンセルですといわれていました。
あとは猫専門などもあります。
オーナーといっても、アーティスト、美術関連の方から、まったく関係ない方まで、その出自は幅広いものです。でも、画廊を構えて、作品を展示し続けることで、その人の隠れた魅力がしみだしてくる場合もあると思います。
いろいろなところに足を運ぶのも面白いですが、一つ所に続けていかれることで、であえるものも少なくありません。
第七回
前回はオーナの好みにまつわる話をしました。好みでなくとも、画廊によっては、特定のジャンルだけを扱うところもあります。
古美術、陶芸、版画、日本画等々。
好みのジャンルの専門のところを見つけて足を運んでいると、いろいろな出会いもあると思いますし、自分のお目当てがみつかることもあるでしょう。
私は、一度、お知り合いになった方からお知らせがあれば、時間の許す限りうかがうようにしていますが、そこから、新しい知り合いや、画廊との出会いもあります。
版画の知り合いができて、銀座の養生堂にうかがうようになって、一気に版画の知り合いが増えていったということもありました。
犬も歩けば棒にあたる、じゃないですが、足を運ぶといろいろと出会いもあるでしょう。
第八回
以前、空間の話をしました。
画廊での展示は、個展に限らず、二人展やグループ展という形で、複数で展示される場合もあります。
画廊が企画する場合もあれば、貸画廊の使用料を出し合って展示をすることもあるでしょう。
美術作品は、空間に影響を及ぼす力があります。複数の展示というのは、それぞれのアーティストの作品のもつ影響力のせめぎあいが起こっているともいえます。
それが上手に調和していることもあれば、せめぎあったり、バランスを壊したりすることもあるのです。
そして、それが、画廊の構造とも絡み合うのです。
そういう見方をすると、展示空間というものに対する興味もひろがってくるのではないでしょうか。
第九回
個展ならではの面白いところの一つは、個展が、ひとつのパーフォーマンスの舞台だということです。
作品の配置そのものに、そのアーティストの伝えたいものがあらわれてきます。だからこそ、画廊の空間を、あなたなりの読み方をするといろんな発見があるのではないでしょうか。
一つ一つの絵を、赤や青や黄色といって照明と考え、絵の力を光量として、どのような空間になっているか想像したりもできるでしょう。
また、音楽のバンドのようにベース担当はどの絵、ギターはどの絵、ドラムはこれか、というように考えても面白いかもしれません。
作家のスタイルによっては、森の中を思ったり、あるパーティーなんかを想う人もいるかもしれません。
第十回
僕らは、大体において、画廊に絵や立体作品など、いわゆる美術品を見にいっています。
当たり前のことですが、画廊というのは社会的な存在なんです。そこがどうして成り立っているかということも、関心をもってもいいことでしよう。
個展には、企画展とか、作家本人がプロデュースする個展があります。簡単に言えば、だれがプロデューサーかということです。
画廊のウェブサイトには、画廊を利用する際の基準や料金が載っていることも多いです。作家本人のプロデュースなら、それだけの手間やお金をかけて、彼らがそこに立っているということです。
作家が立っているということ、それにはそれなりの覚悟があるということではないでしょうか。
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