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【画廊探訪 No.051】木と土と、モリの中で火を見つめ―――筒井童太個展『可愛くないけどカワイイ土物(どうぶつ)』に寄せて――

木と土と、モリの中で火を見つめ―――art Gallery OPPO:筒井童太個展『可愛くないけどカワイイ土物(どうぶつ)』に寄せて――
襾漫敏彦

人は土から造られたとある神話は語る。何らかの力が集まって、突然に人が生まれたという話は、残念ながら私は知らない。無の中から有をとり出すことはできないことを、人は知っているからだろう。土、それは生命と人とを支えてきた無窮の力なのであろう。

 筒井童太氏は、薪をつかって作陶をする陶芸家である。彼は、土と語らい動物を意匠とする。彼の手で焼かれた作品は、土そのものの質感、放置されたまま固まったコンクリート、乾いてひびのはいった粘土、崩れた砂場の城、干あがった湖の底、生々しい土の触感。拙い粘土細工のような土物(どうぶつ)達は、器や皿といった日常の用を新体に隠し持っている。そのユーモアに笑みもこぼれる。
 彼は、土そのものの意味を作品の中で問おうとする。そして、大地の中の生命の原器を問うていく。問いを表現者と素材の座標に置き直したとき、彼は、原点に生命を見出した。技術、素材、表現という三位一体は、人、大地、動物となり、大自然に包まれて、生活、食物、焚火となる。彼は、大地の表現として、動物の造形と、それを焼成するものとして樹木の恵みの薪を選んだ。かくして、動物は器となり、人の暮らしとつながっていく。

 土と水と木、それを組みあわせて<モリ>と書いた先人がいる。木を育て、その火によって再生した土からつくられた器に、生命をつなげる移ろう心のような水をたたえるとき、人も動物も樹木も再生する。土と木と水に囲まれ、全ての命が循環するとき、太陽の恵みの輝きは、薪を通って炎となって祝福するのであろう。

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筒井童太 飛雲窯 ウエブサイト
https://hiungama.jimdo.com/

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