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【画廊探訪 No.098】“Dark in the Color” ――船山佳苗個展『Groovies』 に寄せて――
“Dark in the Color”
――船山佳苗個展『Groovies――船山佳苗のグルーブィなひとびと展』
(Gallery Face to Face)に寄せて――
襾漫敏彦
緊急事態宣言の中で、社会に向けて発信される科学と正義の皮を被ったマツリゴトの言葉が虚しく感じはじめた頃、感覚的に思いのままに行動する者共が跋扈する船山佳苗個展『Groovies』を訪ねた。
船山佳苗は、水でほどいた色を使って、とらわれることなく作品を描く画家である。今回の個展で、彼女はペンで様々な存在を描く。それは、空想の産物であり、彼女による被造物であるが、あたかも欲望をもった者達の化けの皮を剥いだ本来の姿のようにも思えた。
紙が布と一体となったペンによるワイヤーフレームは、モニター上の3D画像のような立体的な支持体となる。船山は、そこに情念の色彩を水流のように流し込んでいく。
物というのは、形と色を備えている。僕等は、形状で物を認識する。けれども、色は、形のフレームを乗り越えて、物の意味、つまり自分との関係性を伝えてくる。
形を離れ色だけで自然を読もうとしたとき、色は赤や青といったカテゴリー化した名称を脱落し、輝きとテンション、そして深さの勾配となって、形のフレームから溢れだしていく。
船山佳苗は色をもって形を描く。エネルギーの奔流、暴れる自然の本来の姿を、彼女は色の中に感じとっていく。船山にとって色がなした形は、大海の上の白い波のようなものであろう。
彼女の絵は、技巧や造作といういわれ方を軽々とこえていく所に魅力がある。人の手でなく自然に育てられた野生児、だからこそ、激しく流れる色の咆哮は、家畜となった社交界の紳士淑女達の生々の姿をひき出すのだろう。
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