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【画廊探訪 No.139】私に寄りそうもののけを信じて―――吉田仁美『PRESS』出展作品に寄せて―――

私に寄りそうもののけを信じて
―――小杉画廊企画展『PRESS』吉田仁美出展作品に寄せて―――
襾漫敏彦
 空の雲、森の木々、湖の小波、僕等は、そこに形や気配をみてとることがある。儚い世界に生きる僕等は、現世(うつしよ)を超える存在を自然の背後に見ようとする。

 吉田仁美は版画家である。彼女は、いくつもの濃度に調整した墨汁を版木の上で使い分け、刷りを重ねて一葉の絵を作り上げていく。『PRESS』では、作品を形成する過程をみせてもらったが、それは、いわゆる産業的な作業というより、ドローイングの絵筆の一刷け、一刷けのようであった。プレス機や輪転機のイメージから、一つの原版から数多くの複製が印刷される印象が版画にはある。けれども版木をあたかも絵筆として、単色に近い墨汁を刷り重ねていく工程は、再現不能なオリジナリティを示している。

 絵を描くことは、そこにあるものを模写していくことである。それは、見えるものから始まった人の営みであった。しかし、人は、絵の向こうにある何かを読みとっていく。そうして、人は見えるものに限らず、見えなくとも、そこにある筈のものを描いていくようになる。そして遂には、見えずとも、そこに存在していることを信じるということにもなっていく。
 これは現実から遊離して、幻や観念的な存在を盲信するという話ではある。そうは言えど、我々の存在は、みえるものだけで支えれているのであろうか。
 木々の後ろに、風の中に隠れている妖怪にも近い存在を、森の中で気配を感じては、振り返るように、吉田氏は刷りを確かめては、又、刷りを加えて、親しみを込めて刷り上げていく。



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本人主催のサイトは見当たりませんが、ネットで検索すると色々出てきます

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