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【画廊探訪 No.064】重ね合わせた二つの風景 ―― 小松大輔氏個展に寄せて――

重ね合わせた二つの風景
――Art Gallery OPPO 小松大輔氏個展『小松恐竜園2』に寄せて―――
襾漫敏彦

恐竜とは、名の如くかよわい人類が恐れなければならぬものであろう。それが飼いならされた犬や馬といった動物のように、日常の中で人間と共に生きるものとして描かれている。老夫婦と一緒に写真に写るケッツアルカトルや、ベンチに座る親子の傍らに寝そべるティラノサウルス。空の青、大地の緑の中で、暖色を抱えこんだ色彩のヒトと恐竜が描きこまれている。

小松大輔氏は、ヒトと恐竜の楽園をアクリル具材で描くが、水彩の情緒的な色の拡散を使わない。透明感のない色使いで即物的に絵具を塗り重ねていく。それは職人が手で描いた頃の映画館の看板を思い出させるタッチでもある。

小松氏は、空想の中の風景を描く。そこでは、人の姿は模式的であり、定型の看板のようにも見える。それに比べて恐竜の方が、生き生きとして、感情豊かに思える。それは、恐竜達が思い描いた空想未来映像かもしれない。

太古より風景は、常に移り変わり続けてきた。今、我々が暮らす日常の風景も、日々作り変えられている。気がついた時には、風景は一変し、多くのものを失い、忘れていく。
進歩と災いは、景色を一変させる。恐竜と我々の日常の間には、多くの災いが、はさみこまれている。二つの風景を重ねあわせた小松氏の絵の中には幾多の災いが折り畳まれているのかもしれない。いや、もしかすると、これからの災いの果てに大地より甦った恐竜達が、かっての人類の姿を懐かしんでいる未来の予想画なのかもしれない。

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小松さんの公式サイトです。見るだけでも楽しいですよ。



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