画廊の楽しみ方ーーなんで画廊に足を運ぶのか(67)
今回は、一回きりの版画を少し取り上げてみなす。樹乃かにさんは、デジタル印刷を使用する作品が主です。これは、制作過程の揺らぎが出にくく、同じものがいくらでも複製できる(?)手法ではあります。
樹乃さんは、それとは違う剥がし刷りという技法にも挑戦しています。これは端的にいうと、柔かい厚みのある版面に深く線を刻み、そこにインクを流し、輪郭を整えるのですが、そこの間に粘度の高いインクをつけて、剥がすようにして転写します。
印刷というよりも転写という方が馴染むかもしれません。
一版多色刷りというのは、この感じに近いやり方かもしれません。
版画は、印刷、複製技術の必要とともに、いろいろな方法を開発してきましたが、それを通して、複製できない一回切りの可能性もあらわれることも興味深いです。