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【画廊探訪No.094】「じゅふん」、日々、繰り返される処女懐胎―――アートスペース羅針盤企画「試行する作家たち、フォルテ7人展」知久真弓出品作品に寄せて―――

「じゅふん」、日々、繰り返される処女懐胎
―――アートスペース羅針盤企画「試行する作家たち、フォルテ7人展」
知久真弓出品作品に寄せて―――
襾漫敏彦

 北陸道の入口にもあたる越前・加賀は、雪深き地である。そして、冬、雲が低く低く垂れ込める日本海を前にして、何かを待って耐える風土なのかもしれない。木曽義仲、前田利家、松平春嶽、橋本左内、日本の歴史を拾ってみると、強大な潜在力をもって、時代の変革を準備しながら成功者として表舞台に残ることは多くなかったように思う。

 知久真弓氏は油彩の画家である。彼女は様々な方向へと素早く筆を運ぶ。乱雑に見えながらも、ある力の場に促されているのだろうか、暖色を基本とする色彩のストームの中に、時として動きを止めている領域(エリア)が存在する。それは、世界を形づくるエネルギーが別の位相へと転移するための通路(ホール)なのかもしれない。

 美術には、保守的な側面と革新的な側面がある。その時代の作家達が足場にする技術というものは、それまでの歴史や伝統という人類の経験で培われたものであり、それは、ひとりの作家が一から作り出せるものではない。けれども過去と未来が接する今は、変わりゆく時代を表現するために様々な挑戦を求める。たとえ、一つの成功のために、無数の犠牲を払っても。
 美しいと感じること、それはわずかな驚きと、それを支える大きな安定から成り立つ。けれども降り積もった雪のように止まって見える景色の向こうには、次の春への無数の動きがある。そのように美の世界も、無数の試みが新しい伝統を支える。知久真弓は、今回の<フォルテ>への出品に「じゅふん」という名を与えた。過去の肉体の中に妊まれていく未来の可能性を感じてのことかもしれない。


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公開できる知久さんの画像が手元にありません。

ネットで調べると、作品がいろいろ出てきます。

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