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展示感想:〈伝統に染み出す心持ち〉第十七回工燈
工燈行ってきました。今回は、面打ちの師弟に加えて、鈴木さんという方が新たに参加されました。
新しい個性の参加によって、新井さん、田中さんの特徴が際立ってきているようでした。
田中さんは、今年の頭に神楽面の共同展示の「面の界」に参加されました。
神楽面は、限りなく地域との結びつきが強い神楽の面を作りますから、そととの結びつきが少なくなりがちな世界です。
田中さんは、この経験を通して、また、ひとつの自信を持たれたようにも思います。
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被ることで、自ずとまとう「見栄」を彩色に纏わすことができたように思います。
鈴木さんの作品は彩色は見事ですが、それ以上に気になったのは、彫りにたいする「意気」のようなものを感じました。
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表したいものを形の中に落とし込む、それが美術の表現ですが、ある強い枠の縛りがあるのが工芸です。それでも、溢れんばかりの想いは、何かに向かっていかざるを得ないのですが、枠を壊せないからこそ、想いは、彫りにあらわれているのでないかと思えました。
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どこか、節々にあらわれる丸みのある田中さんの作品と比較すると、刃先のような深さをもつ鈴木さんの彫りは対称的にも思えます。
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新井さんの面は、人の肌の温もりが伝わる感じがしていたのですが、今回の泥眼、小面は、青みがかった面でした。
この世にあらわれたあの世の存在、その儚さに幽玄の世界を感じるみごとな作品とおもいます。
新井、鈴木、田中と三人ながら、それぞれの趣きがよく出ているようでした。