【画廊探訪 No.068】悠久の時の流れを輝きで飾って ――シーグラスシェード作家Erico 展示作品に寄せて―――
悠久の時の流れを輝きで飾って
―――Art Gallery OPPO 友永たろ個展『サンゴといっしょ』
協力展示シーグラスシェード作家Erico 展示作品に寄せて―――
襾漫敏彦(あまんとしひこ)
シーグラスとは、海岸などで見つかるガラスのかけらである。それは、人間が作ったボトルなどのガラス製品が、割れて捨てられて海へと流されていったものである。それらは数十年もの長い時をかけて海の中で研磨される。本来の色を残しながらも、角がとれ、曇り、小さなかけらとして新しい形に生まれ変わって人の世界に現れる。
Ericoは、波打ち際に流れ着いたシーグラスを探し求める。新しく出会った彼等を粘土で作ったドーム状のフレームに嵌めこみ、粘土の枠組みを漆喰でコーティングしていく。最後に、ドームの内部に点滅するライトを仕込んでいく。
透明なガラスは、冷たい印象がある。けれども数十年の時をかけて研磨されて曇りガラスとなったシーグラスは、生きるものの温もりを感じさせる。そして漆喰の主成分の消石灰は、貝やサンゴ、骨といった動物の骨格が億単位の時を経て形成された石灰岩よりなる。それは、あたかもサンゴや貝といった海の植生を想像させる。
億単位の時の流れ、百年単位の時の流れ、二つの時が、儚い時しか持たぬ人の手によって組み合わされ、秒単位で明滅する光によって新しい時が刻まれるとき、そこに海の景色が再生される。
Sea-ZenのZenは、禅にも、全にも、善にも通じているのだろう。波打ち際で、温かい輝きを、ひとり探すひととき、それは自分の無駄な雑念を止める時でもあろう。止観、そして、自分を包み込む全てと一体になり調和への意思を感じる。彼女は、海との境界線で心を開く。そして自然、Sea-Zenになるのたろう。
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