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展示感想:<あかつきの、かすかな光に>清水佳奈個展「たりない世界

清水佳奈個展「たりない世界」に行ってきました。結構、評判の高い清水佳奈さんですが、今回は初の個展になります。

清水佳奈さんは、幼い頃に亡くした妹を亡くしますが、その喪失感が絵を描く一つの主題にもなっています。清水さんの作品は、光のない世界に浮かび始める断片のような印象がありましたが、今回は、全体が明るく感じる作品が増えてきているようです。



 
夜が明けて少しづつ白み始めている中で、ぼんやりとしていながら形を捉えることができるようなそんな感じです。これまでが、記憶の断片を拾うような感じだとしたら、向き合ったそのものと向き合うそんな違いを感じました。


 記憶は、体験そのものではなく、作りかけのパズルのようにある部分が強く輝くように現れるもので、思考の中で選別されているものです。向き合うことは、気が付かない部分も取り込むことではあります。
 清水さんの作品は、自分を描いているのか、誰かを描いているのか、渾然としているところがありますが、今回の個展では、これまでの自分を他者にする、向き合うそんな印象を持ちました。


 版画というのは、表現に至るまでの工程がいくつもある世界です。思いを直接に描き出すような絵画の世界と違い、表現したい姿を導くまでにタイムラグが生じます。言葉を出す前に、少し一呼吸おいて、語るそんな感じかもしれません。その間合いが、少し落ち着かせてくれるのでしょう。
 何かと向き合うには、ある距離が必要になります。感情に取り込まれないために、清水さんにとっては、感情に取り込まれず向き合うために、そのインターバルが重要なのかもしれません。

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