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【画廊探訪 No.181】水平線の彼方に向かう海の灯――櫻川豊敏 〜常住の灯をかかぐ〜 Oギャラリー出品作品に寄せて――
水平線の彼方に向かう海の灯
――櫻川豊敏 〜常住の灯をかかぐ〜 Oギャラリー出品作品に寄せて――
襾漫敏彦
四方を海に囲まれた島に暮らす若者は、海を眺めて、その水平線の先にある自分の未来の姿を想う。海の先には、人を、人の時と処を超えた何かがある。沖縄の海、若者の視線の彼方には、ニライカナイがいるという。
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櫻川豊敏氏は、沖縄出身の作家である。彼は島を離れて美術を学び、現世の存在の向こうにある意味を求めて抽象画を描いていたが、年を重ねては、己の実感に従うようになっていく。具材もピグメントから工夫を重ねて、自分の質感に馴染むものにしたり、故郷の海岸で拾った珊瑚の欠片をあしらったりする。
そのものとしての個別的な事物から離れた理念(イデア)を目指していた作品は、櫻川の身体から溢れだす温もりや体臭、汚れをそのまま染めつけるようなものへと変わっていった。
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現世から抽出される理想や理念は、人を超越した殿上の住人達が味わう甘露かもしれない。もしくは、現世に縛られた様々な動きをとりあつめたときにほのかに見える幻影かもしれない。
犠牲の獣を燃やした煙は、ゆらゆらと漂いながら天に昇る。その煙は、天上のものなのか、地上のものなのか。理想、真理、理念、天上の輝きと比するに地上の現実は暗く、沈黙、現実、闘争、大地の人々の蠢きを知るにつれ、蒼天の光はあまりに軽い。
櫻川は精神の趣くままに作品を描いたという。それでも、今回の個展にあらわれているのは真横に広がる水平の線である。
表現は自分の内側から湧出する。思いがけずにあらわれた水平線は、幼少から見つづけた海の涯(みぎわ)なのだろう。寄せては返す波の間には、時に何かが浮かんでいる。それは、暮らしを守ろうとする短艇であったり、海へ流した精霊の灯かもしれない。地上に縛られた人々は、想いを空へ託す。けれども行動は、広げるようにまっすぐ続けるしかないのだろう。
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櫻川さんの公式なサイトは見つけられませんでしたが、ネットでは展覧会情報など、いろいろな情報も出ていますので、興味ある方は探してみてください。