看護学生だった頃からがんとは縁がある気がしていた。
もう20年近く昔の話。
まだ看護学生だった頃。実習とレポートまみれの毎日だった大学3年〜4年生ぐらい。1番大変だったのは外科病棟の実習だった。反対に1番楽しかったのは精神科実習。
外科病棟の指導者看護師が激スパルタで、すんごいしごかれた。だから新人時代はあえて外科病棟を選んだ。ここでやっていければ、きっと今後の看護師人生どこへ行ってもやっていけると思って。結局心折れて海外逃亡して、一度は看護師から足洗っちゃってるんだけどね。
そんな大変だった外科病棟の実習が、色濃く記憶に残っている。受け持ちをさせてもらったのは、卵巣がんで化学療法中の女性だった。
指導者は厳しかったけど、患者さんはとても優しかった。予後はあまり良くなかった。あの頃はまだ患者に告知しないケースもたくさんあって、私の受け持ち患者さんは自分のがんの状態を詳しく知っていなかった。家族だけが詳細を知っている。
予後が悪いと分かっていても、少しでも長生きしてほしいという家族の思い。どの程度の効果があるか分からない状態で、抗がん剤治療をがんばる患者。裏舞台を知っているまだ免許もない初心者未満の自分。
病院には、さまざまなドラマのような場面が散りばめられている。
患者さんはとても優しく、明るく、いろいろな話をしてくれた。学生の自分が病室へ来ることを喜んでくれていた。受け入れてもらえていることが嬉しかった。
実習が終わるとき、患者さんの手書きの絵葉書をもらった。
ひまわりの絵と「いつも 心に 太陽を」と書かれていた。
本当に太陽みたいに明るくあたたかい人だった。身体は大変なはずなのに、心は病んでなかった。
きっともう彼女はこの世にはいない。それを知るすべもない。
あの実習の頃、第六感も霊感も第三の目もないけれど、なぜか自分の人生とがんはきっと縁があるだろうなと思った。
想像ではターミナル病棟で働いてるとか、がんに関わる仕事をしている姿を思い描いていた。自分が患者になるとは予想外だったけど。笑
夏になると、あの忙しすぎて寝不足で、でもとても充実していた青春の夏の一コマを思い出している。