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ホワイト教育の先にある無意識なネグレクトが起こっているお話し     (野生動物に学ぶ生存戦略)

はじめに

「自分を守る」という言葉を聞くと、多くの人は「リスクを避けること」、「無理をしない」、「安全な環境を選ぶこと」を思い浮かべるでしょう。しかし、それは本当に自分を守ることなのでしょうか?

この記事では、守られている環境がいかに生物を危険に追い込むのか?野生動物の生存戦略を参考にしながら、「本当の意味で自分を守る」とは何かを考えていきます。

野生動物が教える“生き抜く力”

野生動物の親が子どもに教えることは、極めてシンプルです。

  1. 餌を取ってくる(独り立ちするまで)

  2. 餌を取る方法を教える

  3. 外敵から身を守る方法を教える

たとえば、百獣の王と呼ばれるライオンでさえ、生まれたばかりの赤ちゃんは弱く、無防備で、他の捕食動物の餌になりかねません。理由はライオンの赤ちゃんはどれほど周りが危険なのか認知できません。そのため、親ライオンは子どもを外敵から守りながら、餌を取り、狩りの技術を教えていきます。

ここで重要なのは、百獣の王でも「自分の弱さを知る」ことが生存に不可欠だという点です。もしライオンの子どもが「自分は強い」と誤解したまま育てられたら、リスク管理せず草食動物を狩りに行き、怪我をして、やがて命を落とすでしょう。(野生では怪我したら終わりの場合が多い)

人間社会における「本当の自己防衛」とは?

では、人間社会において「自分を守る」とはどういうことでしょうか?

現代社会では、SNSや学校教育の影響で「自分は正しい」「失敗は避けるべきもの」「あなたには可能性がある」といった考え方が強まっています。しかし、無条件に、前提条件なしにそれらの考え方が成り立つことはありません。逆に、自分が正しくないこと、失敗をしてしまうこと、社会からの能力以上のものを要求されることは頻繁に起こります。

お子さんが中学や高校に在籍している知人が多いのですが、「子供が通信教育です」「フリースクールに通っています」と耳にする機会が多くなってきました。私から見たら他人事なので本人にとって良いことであれば良いと思っています。しかしながら会社で20代と一緒に働いていると「自分が正しくないこと、失敗をしてしまうこと」を受けれられずに「無かったこと」として仕事を進める人達に多く接するようになりました。当然のことながら仕事を進める上で生産性が急落し、信用を落とすわけですが、本人としては「上手くやっている」という認識のようです。業務後の反省会でミスした事象は報告されないことがあります。この強烈な「回避特性」の顕現に少々恐ろしさを感じてます。幼少期から、目の前で起こった失敗を「次頑張ろう!」「よいチャレンジだった!」とごまかし、本質的な事柄を突き付け、責任を取らせないと「自分」という人間がどんな人間か不明確なまま社会に出ていくのではないか?と思うのです。「社会で要求される」「自分の限界を知る」「できないことを受け入れる」「無理をする」ことを経験しないことが社会での生きずらさを生んでいるように感じます。彫刻もそうですが、人間削られないと輪郭が明確にならないのです。

  • 親や学校が、子どもに限界を示すことの重要性
    人は「自分の限界」を知らなければ、それ以上の努力をしません。トップアスリートが1cm、1秒でも記録を伸ばそうと努力するのは、自分の限界を知り、それを超えようとするからです。しかし、多くの人は「できないことを認めたくない」ため、限界を知ろうとしません。実際の職場でも「それは出来ません」という言葉を発する人がいます。理由を聞くと「出来ない」ではなく「やりたくない」ということが大半です。ここ最近は多くのアスリート達が、この風潮に疑問を呈してます

  • 「多様性の尊重」が「社会は自分に合わせるべき」にすり替わる危険
    本来、多様性とは「自分は正しくないのでお互いを尊重し合うこと」だと思うのですが、一部では「自分に都合のいい考え方を社会が受け入れるべき」という風潮になっています。学校や職場でこの「自分にとってストレスの少ない環境でなければならない」という考え方が強まりすぎると、現実社会で生き抜く力が育たなくなります。御存知のように、社会はそれほど個人を尊重してくれません。学校はお金を払っているので個人の尊重してくれますが、社会はお金を頂くので社会のルールを強要してきます。学生時代の「自分にとってストレスの少ない環境でなければならない」という考え方を引きづると、お金を貰いながら(社会人)お金を払っていた(学生)行動を取ってしまい社会に適合出来なくなっていきます。

社会に出たときの“外敵”

子どもが「お金を貰いながらお金を払った行動を取って」も良いと思ったまま社会に出ると、現実とのギャップに苦しみます。

例えば、

  • SNSだけで得た情報を信じ、世の中の仕組みを理解しないまま行動する

  • 「自分は価値があるはず」と過信し、理想と現実の差に絶望する

  • 自分に合った会社があると思い込んでしまう

最近では「3ヶ月でプロのエンジニアになれる」などのキャッチコピーでIT業界に誘う広告もありますが、現実はそう簡単ではありません。時間と労力を投入することなしにスキルを得られるわけはなく、3ヵ月でプロのエンジニアになれるのであれば自分と同等の能力を持つ人材もプロになれるのです。もしそうなら、その「プロのエンジニア」は人材が溢れかえっているのではないでしょうか?社会の仕組みを知らない人、現実を受け入れたくない人ほど騙されやすいのです。

健全な対立と「本当の自己成長」

「自分の限界を知る」ためには、他者とのぶつかり合いも必要です。

  • 失敗や挫折を経験し、自分の弱さを受け入れる

  • 他人との意見の違いを理解し、自己主張する

  • 社会のルールを学び、その中で生き抜く力を養う

これを避け続けると、回避型パーソナリティ障害や自己愛型パーソナリティ障害を引き起こすことがあります。実際、YouTubeにはこれらの障害に関する動画が多数投稿されており、多くの人が「自分を肯定してくれる場所」を求めているのが現状ではないかと想定されます。

本当に自分を守るために——まとめ

本当に自分を守るとは、「傷つかないように避けること」ではありません。

自分の限界を知り、成長の機会を逃さない(無理をする)
社会ルールが基準であり、その基準への適応力を身につける(社会に合わせる)
失敗や対立を通じて、本当の強さを得る(自己管理・情動の抑制など)

子どものうちにこうした経験を積むことができれば、大人になってから社会の荒波に耐えられるでしょう。逆に、避けてばかりいると、いざ現実に直面したときに何もできなくなってしまいます。

社会の風潮として「やりたくないことはやらなくていい」「無理しなくていい」という言葉が広がっています。しかし、それが子ライオンに「自分を守る」ことを教えているのでしょうか?

どこかで歯止めをかけなければ、本当の意味での自己防衛はできなくなるのです。

そう、この文章を読んだあなたも、知らない他人の成功を願ってはいないし、願わくば自分より不幸になって欲しいと思っているかと思います。そんな世の中で「やりたくないことはやらなくていい」で生存し続けることは出来るのでしょうか?私は疑問に思っています。

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