長島 信之

ミステリ好き。読んだ本のレビューをぼちぼち投稿していきたいです。

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最近の記事

Nobuyuki’s Book Review No.5 ガブリエル・ゼヴィン『書店主フィクリーのものがたり』小尾芙佐訳(ハヤカワepi文庫)

 島にある一軒だけの本屋〈アイランド・ブックス〉店主A.J.フィクリーは妻を亡くした悲しみの淵に沈み、酒浸りの日々を送っていた。売り込みに来た出版社の女性もぞんざいな態度をもって追い払ってしまう。彼女はなにも悪くないのに。そんな、ある夜のこと。例のごとく酔い潰れて寝ている間に、莫大な価値のあるE.A.ポーの稀覯本を盗まれてしまう。A.Jは警察に届ける以外に為す術もなく打ちひしがれる。そして、今度は自分の書店に赤ん坊をが捨てられているのを発見する。マヤという、その愛くるしい女の

    • Nobuyuki’s Book Review No.4 アンジー・キム『ミラクル・クリーク』服部京子訳(ハヤカワ・ミステリNo.1961)

       二〇〇八年八月ニ十六日。バージニア州郊外の町、ミラクル・クリークで韓国人の移民ユー家が経営する酸素治療施設が燃え、何人もの死傷者がでた。焼死した自閉症を患う少年の母親が逮捕され、一年後、裁判がはじまった。パク、ヨンとその娘のメアリーのユー家、酸素治療を受けていた患者など関係者たちの葛藤や秘密が語られていき、やがて事件は思わぬ方向へと進んでいくのだった。  アンジー・キムの長篇デビュー作『ミラクル・クリーク』は、エドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)、国際スリラー作家協会賞、

      • Nobuyuki’s Book Review No.3 大沢在昌『無間人形−新宿鮫4−』(光文社文庫)

         通称「アイスキャンディ」とよばれる覚せい剤が若者の間で流行しはじめていた。新宿署の鮫島は密売ルートを探るべく行動を開始し、捜査線上に藤野組の角が浮かんだ。さらに、麻薬取締官・塔下とタッグを組み、覚せい剤の製造元に地方の有力者・香川家が深く関わっているとの情報をつかむ。やがて、事件は鮫島の恋人・晶を巻き込み、急展開をみせていくのだった。  大沢在昌『新宿鮫』シリーズ第四弾の本書は第百十回直木賞を受賞。新手の覚せい剤の密売ルートを探り、壊滅させようと奮闘する孤高の刑事・鮫島の活

        • Nobuyuki’s Book Review No.2 リチャード・スターク『悪党パーカー/犯罪組織』片岡義男訳(ハヤカワ・ミステリNo.1040)

           女の悲鳴に目を覚ましたパーカーはとつぜん弾丸に襲われた。ベッドから転がり落ちた同時にパーカーは、身をひるがえし、隠し持っていた拳銃を投げつけ、間一髪、相手の男を制圧して難を逃れた。男はニューヨークの犯罪組織から送り込まれた殺し屋だった。因縁をつけられて以来、幾度となく命を狙われ、そのたびにくぐり抜けてきたパーカーだったが今度のことで堪忍袋の緒が切れた。激しい怒りに燃えたパーカーは、手始めに各地に散らばるプロの犯罪者仲間たちに、組織への急襲を求める手紙を書いた。日頃から組織に

        • Nobuyuki’s Book Review No.5 ガブリエル・ゼヴィン『書店主フィクリーのものがたり』小尾芙佐訳(ハヤカワepi文庫)

        • Nobuyuki’s Book Review No.4 アンジー・キム『ミラクル・クリーク』服部京子訳(ハヤカワ・ミステリNo.1961)

        • Nobuyuki’s Book Review No.3 大沢在昌『無間人形−新宿鮫4−』(光文社文庫)

        • Nobuyuki’s Book Review No.2 リチャード・スターク『悪党パーカー/犯罪組織』片岡義男訳(ハヤカワ・ミステリNo.1040)

          Nobuyuki’s Book Review No.1 生島治郎『黄土の奔流』(光文社文庫)

           辛亥革命後、各地の治安は劣悪を極めていた。中国に渡って十五年目の夏、破産した紅真吾は、悪質な娼婦からひとりの日本人を助けた。相手は奇しくも、商売敵である大手商社の支店長であった。その男から、豚毛でひと儲けしないかと誘われる。男の代わりに、危険極まりない地帯をかいくぐり重慶で豚毛を仕入れて欲しいとのこと。すべてを失った真吾は、命を助けられた短剣投げの名手・葉村宗明とともに誘いに乗ることに。急きょ雇った八人の男たちと上海から重慶をめざし、揚子江を遡る命がけの旅がはじまる。  日

          Nobuyuki’s Book Review No.1 生島治郎『黄土の奔流』(光文社文庫)