「スーパーカブ」2話までを観て思い返した事
注:この記事は先日アップした記事の書き直し版です
記事名と直接関係は無いのですが、徒歩でも自転車でも電車でも、普段から慣れ親しんでる道を外れて新しい道のりに触れるのは、楽しいと同時に適度な緊張感があって楽しいです。
長い時間を掛けて出歩いて、思い掛けない事に遭遇したり、しなかったり。それでも気を張りながら帰ってきて、息抜きをした瞬間の心地よい疲労感は、なんともクセになるものがあります。
多かれ少なかれ誰もが持っている経験だと思うのですが、見知らぬ場所への憧れと好奇心、自分の体験として「そこに行った」という経験値は、次にまたどこかへ行きたいという感情を後押ししてくれます。
「スーパーカブ」は、そうした感覚を手に入れた時の気持ちを思い返させてくれるとても良い作品だと思うのです。
放送中のアニメ「スーパーカブ」は、1人の女子高生が思い立ってカブを購入し、日々の生活の中に変化が生まれていく、という物語です。
(現在放送されている2話までで、)物語的に派手な出来事は無く、淡々と小さな物事を丁寧に描いているのが特徴です。
誰もが普段からやるような、朝起きて家を出て、帰宅して就寝する。
それをとにかく丁寧に、適度な強弱をつけて描いています。
このアニメの特徴に、主人公の感情を描く事へのこだわりが非常に強い点を挙げることが出来ると思います。
日常描写の丁寧さの中にも、彩度の強弱や音空間の作り込み、アニメ的な仕草や表情のデフォルメと、リアルな空気感のバランスなど。様々な側面から「その時主人公が感じた事」をどれだけ純化して伝えられるかに重きを置いているかを感じることができます。
普段はとてもフラットな表情の主人公ではあっても、その時にどう思っているのか、彼女自身がどういう性格かを描く事に関して、映像として非常に高い水準で応えられていると思うのです。
バイク屋の主人への対応や、礼子への接し方、トラブルが起きた時の言動など、様々な部分から彼女の生き方を上手く表現しています。
同時に、彼女のようなタイプが思い付きに近い行動でカブを入手し、慣れない「冒険」に繰り出すか、という事を思うと、主人公を描いた物語としてはかなり大きな出来事が起きていると捉えることも出来ます。
画的に派手な出来事が起きていなくても、主人公にとって大きな出来事が起きていると伝えられているという点に於いて、この映像作品はとても成功していると思うのです。
そして、自分1人で遠出できるようになった時の感覚を少し思い出しました。
今までは行けなかった場所へ行ける。出来なかったことが出来る。
それがどんな事であれ、手元にそれが叶う手段があればやりたくなるものです。
実際にそれをする主人公の感覚とシンクロしながら追体験が出来る作品です。
1話でアクシデントに出会い、そこから帰宅して一息入れた時など、本当に気持ちの良い疲労感を得ることが出来ました。
2話では共通の話題を持つ友人の言葉に、更に冒険する事への魅力を刺激され、カブで走る事への誘惑がより大きくなっていきました。
続きはまだこれからの作品ではありますが、とても楽しみに放送を待とうと思います。
ちなみに、この作品はとても音の作り込みが良い作品でもあります。
もう1人の主人公であるスーパーカブの効果音や、空気の広さや温度を感じさせる環境音、それに対する人物の声量のバランスなど、とても心地よく聞ける作品でもあります。
こういう作品はスピーカーとヘッドホン両方で楽しむとより深みが出て面白いので、オススメです。
BGMも、主張の少ないシンプルな小編成の音楽と、要所要所にドビュッシーのピアノ作品が挿入されており、この作品に独特の間をこうかてきに演出しています。
サウンドトラックがとても楽しみです(ドビュッシーの作品も収録してほしい)。
今のコロナ禍で遠くまで出掛けるのはなかなか難しい事ではありますが、この作品を観ると、自分の心の地図をより広げられたような、清々しい気持ちになります。
同時に、もっと出掛けたくなるのですが。
もしこの記事を読んで気になったとか、また観たくなったという人はぜひ観てみてください。
配信してる場所などもありますので、下に公式HPとニコニコ動画の1話のリンクを貼っておきます。
TVアニメーション「スーパーカブ」公式HP
→https://supercub-anime.com/
ニコニコ動画〜TVアニメーション「スーパーカブ」#1「ないないの女の子」
→https://nico.ms/so38571104