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久保田先輩の涙と、装い・声の発し方

今日も、朝ドラ『虎に翼』について。

学生としても、弁護士としても、『女性の生き方』としても、寅子の少し前を走り続けた久保田先輩。
「夫の実家のある鳥取に移り住む、弁護士の仕事も辞めると思う」と言う。

「婦人弁護士なんて、物珍しいだけで誰も望んでいなかった」
(ここで寅子は否定。それを強い口調で遮る久保田先輩。どれだけ辛い思いをされたのか…)
「結婚すれば、弁護士の仕事も家のことも、満点を求められる。絶対満点なんて取れないのに」と、珍しく感情的に話す久保田先輩の目には涙が。

これは現代のドラマか??? と思ったことがこれまでも何度かあったけれど、今日の久保田先輩を見てて感じたのは、既視感。
私の場合は、「絶対に満点を取れない」と思い込み、妊娠が分かった段階で辞めるという意思決定をしたのだけれど。(14年前のことです)

今ならば、満点じゃなくて良いのよ~ と言ってやれますが、当時はリーマンショック後のボロボロな世の中。私は、人材紹介会社でキャリアアドバイザーをしていたのですが、仕事を求める人は増える一方で、紹介できる求人がない・ない・ない。
実際に満点が取れるかどうかは別として(もはや誰も取れてない状況)、仕事に向かう姿勢だけでも満点を取り続けたかった私は、諦める理由が欲しかったのかもしれません。
*ちなみに逃げの退職の後は、2年ほど自分責めが続き、泣きながら育児をしたことも今となっては遠い想い出…

久保田先輩は、決して諦めたり逃げたりしなくはなかったと思うので、自分とは違うのですが、それでも。それでも胸がギュっとなります。

久保田先輩に話を戻すと、彼女はずっと無理をしていましたよね?

口頭試問での失敗を重く受け止め、真っ向勝負やキツイ話し方を封じ込め、求められる自分を演じた。3人揃って女弁護士誕生となった時も、久保田先輩の写真だけ他2人よりも大きく掲載された(おそらく、美人だという理由で)。女性弁護士として初めて法廷に立つときも、その後も、求められる自分でい続けた。言葉遣い、話す内容、立ち居振る舞い…

久保田先輩の家庭での姿は描かれていないけれど、きっと、義理のご家族の期待に沿うように、頑張って、頑張ってきたのではなかろうか。夫は理解があるのだから、自分はとても恵まれているのだから、多少自分を偽ることなど苦ではない、という顔をして。
そして、「満点を取る」ということに邁進した。仕事でも、家庭でも、満点でなければならなかった。  

でも、世の中は、果たしてそんな自分を本当に求めているのだろうか?
世の中が必要としているのは、いつの世も、「男」である。もしくは、人間離れした「満点を取り続けられる女」だけ…。

今朝の朝ドラは、寅子さんが久保田先輩の仕事を引き継いで、数多の悩める女性からのお悩み相談の手紙を読みふける姿で終わります。

久保田先輩は、そんな女性たちの嘆きや哀しみを背負って、自分の存在が世の女性たちに求められていることを知りながら、それでも降りる決断をされたわけです。

これが一番堪えましたよ、私は。


ところで。本日は朝ドラに続き、「朝イチ」のゲストとして、山田よねさん役の土居さんが出演されています。

土居さん、当然のことながら、よねさんの時とは装いも、声も全然違います。よねさんが、もし生まれや育ちが違ったら、土居さんのようにふんわりとした雰囲気を纏っていたのかもしれません。
また、意図的に自らを変えることもできますね。昨日朝ドラに登場した、依頼人として寅子をだました、こわ~い女性のように。
人は、なりたい自分を演じることができる生き物なのかもしれません。

久保田先輩は本当はどうしたかったのだろう?
本当はどんな自分でいたかったのか? どんな自分で振舞いたかったのか?

史実では、鳥取で弁護活動をつづけた中田さんという女性がいらっしゃったそうなので、久保田先輩も元気を取り戻して、お仕事に復帰していただけたら… これは個人的な願いですが、そうなったら良いなと思いました。