【山崎ナオコーラさん】ニキの屈辱


作者:山崎ナオコーラ さん
タイトル:ニキの屈辱


有名な作品なものの、読んだことが無かったので今更ながら近所のTSUTAYAで購入。

”芸術家同士の恋愛をこんなにも上手く書かれた作品はない”
解説には、こう書かれていた。
私は芸術家ではないし、割と対局な場所にいて、
平均的で安心安全な場所で平均的な人たちと付き合っているからか、その意味は分からなかった。

けど、物語に出てくるニキの気持ちは自分とリンクするものがあった。
写真家の自分が好かれていて、
写真家としてもっともっと成長して成功して、
尊敬されなければいけない。
そう思うのは、きっとみんな同じだろう。
私だって、会社の人を好きになれば仕事で評価されなければいけないような気持ちになるし、実際に仕事を以前よりもメキメキ頑張る。
(仕事と恋愛をくっつけてしまうのは女性的な脳みそ特有なのかしら?)
でも、仕事が急にできるようになることなんてあり得ないから、
頑張った分、出しゃばった分、以前よりも失敗して恥をかいて、自分が嫌になる。
どんどん、間違った道を進んで自分を嫌いになって。
そんなんだから、恋愛が上手くいかなくって、仕事も何となく辛くって。
自分の恥ずかしさや辛さをフォローするのに必死でふとあたりを見渡すと、
相手は全然違う方向に向かって、うんと先を歩いていて、
キラキラ輝いていて、
優れたものを作り出していて。
私の中に、劣等感、恥ずかしさ、憤り、嬉しさ、
様々なベクトルの感情が溢れかえる。
その中でなんとなく気づく、
もう戻れないことも、自分が愚かで滑稽であることにも。

そんな愚かさにも気づきながら、彼の前では
自分が大切にしているものを放り出して、いや、放り出すふりをして、
構ってほしくて、心配してほしくて、
私と会っていないときに私のことを思い出してほしくて。
自分のアイデンティティを全部捨てても良いと思って向き合えば向き合うほど、彼は私から離れていって。


私も本当はダボッとした柔らかな素材のジーンズに
パンダのイラストが描かれたお気に入りのTシャツを着て、
目的もなく一緒に散歩したかったりする。

でも、今日もセオリーで買った艶感のある
くすんだ水色のワンピースを着て会いに行く。

まあ、そんなもんだ。


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