2024/10/25
今週は新規案件の初回定例会議と、既存案件の追加契約に絡む会議があり疲弊しきってしまいました。
両方の案件を一緒にやっている上司は別件の提案活動で忙しいらしく愚痴っぽくなっており、そのネガティブ感情も拾った私は自分の忙しさ以上の精神的な疲労でなんだか調子悪いまま金曜夜に。
家庭に持ち込むと負の感情が伝播して、疲れているであろう夫の不の感情を増殖させることになりそうだったので奮発したデリバリーをオーダーしてご機嫌で帰りを待つ。
デリバリーの到着を知らせるインターホンが鳴ったので仕事を一旦切り上げることに。商品を受け取ると、「ありがとうございました」と言って踵を返したアルバイトの中年男性。現金払いを指定したはずと思いつつ、心配になって伝票を見ると黒い大きな字で"現金払い"と書かれている。咄嗟に「代引きですよね」とデリバリーに適しているかどうか分からない言い方をしてしまったが、アルバイトが戻ってきたので通じたみたい。すみません、すみません、と店舗にクレームは入れないでくれと言わんばかりに肩をすくめてぼそぼそと免罪符のように言い続けるが、私もそんな面倒なことをする気はないのでお財布から万札を取り出して小銭があるかちゃらちゃらさせてみる。
アルバイトは、私用と思われる携帯の電卓に受け取った金額と代金を打ち込み208円のお釣りをコインケースから丁寧に数えてつまみ出し、手のひらにすべての硬貨が見えるように広げた。なんとなく彼の手から受け取る気にはなれず、小銭入れの口を全開にして無言で差し出す。そのまま小銭入れに効果を落とし入れて、礼儀正しく一礼してそそくさとエレベーターホールに向かっていった。
仮に代金を回収せずに帰ったら、彼は怒られるだけで済んだのか、次の契約で首を切られたのか、自分の営業所に戻る前に気が付いて回収に戻り渋滞していたなどの嘘をついたのか、こういったミスを度々起こしていてすでに仲間たちから呆れられている存在だったのか、あわよくば代金を掠め取ろうとしていたのか、もしばれそうになっても至極落ち込んでいるかのように見せれば通報されずにばれないと思っていたのか、それとも実は今時の人間で私が払わないシーンをこっそり携帯で録画していて"未払い食い逃げ!"というタイトルでショート動画でも上げようとしていたのか、考えるときりがないがやっぱり丁寧に声をかけて怒りもせずに淡々と支払いを済ませてよかったと安堵する。
数分後には夫も帰宅して、絶好調とまではいかないものの、通常運転の範囲で機嫌のよい夫。食事を始めて暫くたったとき、テレビには大家族でコストコに行く企画が流れ始めた。この大家族というのは祖父母・企画のメインとなる夫婦・夫婦の子供が4男4女で沢山いる、という12人家族だったわけですが、これを見て2世帯ですごいねと私が言うと、夫が4世帯だと。
訳が分からず、2世帯じゃないの?あれ3世帯かな?と言ったら、お酒が回って少し口が悪くなった夫は「どういう数え方をしたらそうなるんだ。4世帯だろ。祖父母と暮らしてるって書いてある。だから4なんだよ。」と語尾を強くしてまくしたてて呆れと軽蔑の目を私に向ける。普段は、温厚で家事にも比較的協力的で話下手な私を楽しませてくれる夫に感謝と尊敬をしているが、言い争いや自分の考えが理解されない・否定されたと感じたときは、高圧的な本性が現れる。
私は世帯数を否定しただけのつもりだが、夫は自分自身を否定されたと思ったのだろうか、それともバカな妻の答えよりも自分が間違っているわけがないのに口答えしてきたことにイラついたのだろうか、自分の意見が軽視されているそれは即ち自分自身が軽視されていると思ったのだろうか。
私は度々、夫が私を軽んじているとしか思わざるを得ない態度を取られる。結婚当初は反論もしていた。けれど、反論することで余計に傷つけられることを知った。私を軽視している夫は、私の意見に心から耳を傾けて行動に移すことはしないし、自分を変える努力というものをしない。なぜなら自分が正しく、バカな私の意見は間違っていると思っているから。世帯数が間違っているかどうかは最早どうでもよかったし、こういった些細な話をきっかけに垣間見える高圧的な態度は、少しずつ私の心がはがして冷たいものにしていく。べりべりと剥がれるわけではなくて、密着するように丁寧に埃を取りながらヘラを使って慎重に貼ったIphoneの画面保護シールのように、iphoneのバッテリーが悪くなったり、修理するほどでもない不調が出始めるのと同じくらいのペースで、少しずつ表面に細かい傷ができはじめ、じわじわと4隅が傷つき、段々とこぼれるように削れた保護シールが鋭利な刃物となって時折親指や手のひらに刺さるのと同じように、何か行動に移すまでではないが日常の不快さとなって表れる。でもそれも、毎日使っているうちに何となくなれて麻痺して気にならなくなっていく。それでもシールの劣化は続き、端っこからじわじわと空気が入り始めて、iphoneが壊れるかシールが先に剥がれて画面が傷つくか待つ日々が始まる。そしてどちらかが起こるときには本体料金の支払いも終えて、修理なんて出さずに最新機種に買い替える。
私たちの関係とよく似ている。まだ始まったばかりで最後どうなるのかは分からない。途中で適切な手当てをしたらきっと長持ちするんだろうけど、そんなことをする勇気はない。子供が生まれたら少しは変わってくれるだろうか。私の父は、私が小学生だったころと比較して大分丸くなり自己中心的な態度が減った。人は年齢とともに変わることができる。ただそれは、あくまで内省的なことで、他者の影響を受けたわけではない。ましてや最も身近な人間の言葉や態度に影響されない。自身の経験や過去の努力に慢心せず、他者の言葉に偏見をもたずに心から耳を傾けることができる人間は良い影響を受けることができるかもしれない。でもたいていの人はそうではない。特に今の自分が成功あるいは立派だと思っていて、それは自分の努力の結果だと思っているような場合またはそれ相応の多大なる時間と労力をかけて人よりも努力したと胸を張って言えるような場合、他者は自分を構成する対象となり得ない。
私は笑いながら「そんな強い言い方しないでよ。」とだけ言って、それ以降は傷ついた態度も怒った態度も出さずに和やかにご飯を口に運ぶ。満腹に近づいていることもあってか美味しさを感じない。
テレビの流れで、すべての子供が夫婦の子供であることが明示され、夫は驚いた反応を見せ、長男29歳じゃどこで子づくりしているんだろう、と下世話な話を始めた。それでも、先ほどの発言については触れない。プライドが許さないのだろうか。間違えたことではなく、間違っていたにもかかわらず私が間違っているとして内心呆れていたが実は自分が間違っていて呆れ果てていた対象は自分だったということを認めることはプライドが許さなかったのだろうか。酔っぱらっていたことを理由に、深く考えていなかったり覚えていなかったりするのだろうけど、1度ではないこういった態度に彼の無意識下での考え方や人間性というものを感じる。
良い年齢なんだから、お酒で人間性を垣間見せるようなことをしないで欲しい。これはお酒飲みではない私のわがままなんだろうか。
完璧な人なんていないと思うと、きっと夫は””良い夫””なんだろうし、””私にはもったいない夫””なんだろう、そう思って忘れることにした。でも確かに小さな傷が私の心についている。今日は修復作業をしない。いつかするんだろうか。それも分からない。
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