初めての寄席 in 新宿 末廣亭 2024年11月 上席
友人の推しである桂歌春師匠が出ると聞き、興味本位で観に行った寄席。見ること全て何もかもが新鮮だった。舞台やミュージカルの観劇に慣れた人が、初めて寄席に行ったら驚くことばかりだったという話をしたいと思う。
寄席はコスパ最強!!!
寄席のチケットは舞台と違ってs席とかが無い。
大体が当日券で早く入ったもん勝ち。そのため舞台が見やすそうな前から5列目辺りの席で観劇した。
金額は以下の通り。
最近の舞台の値上がりやチケットサイトの手数料の値上がりを思うと、ナマで楽しめる娯楽がこの金額って凄い。2月にやる帝劇コンサートは1番安い2階の後方席で1.3万円。寄席は最前列でも3000円だって言うのに。
それでいて開演時間が大変長いことにも驚いた。
もう残りの出し物が少なくなってきた15時過ぎくらいにも人が入ってくるから不思議に思っていたら
「ああ、夜の部も観劇するからだよ」と友人。
待て待て。昼の部終わったらマチネとソワレみたいな感じで、客が総入れ替えする訳じゃないのか。
定席(じょうせき:寄席をやる場所のこと)から出なければ、昼から夜の部まで観ていいのだそう。約8時間の舞台を最前列3000円で観劇できる世界線があったとは……いやはや驚いた。目から鱗。
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昼の部の間にも中盤以降に休憩はあったが15分程度だったように思う。ちなみに寄席での休憩は "中入り" と言うらしい。
ずっと見ていたいけれど、途中でお腹が空いちゃうと思う人もいると思うんだけど、寄席は飲食しながらの観劇が可能なのだ。それは事前に教えてもらっていたから、当日驚くことは無かったけれど、いざ寄席に行ったらお弁当まで売られていたのはとても新鮮だった。だからなのか客席もほんの少し薄暗くなる程度で、メモを取ることも可能な明るさで開演した。一応「携帯電話の電源はお切りください」といった注意はあったけれど、バイブレーションなら聞こえない程度のざわめきの中での観劇時間だった。というか寄席の途中で客席に着く方もいるのだから、携帯の電源が付けっぱなしでも当たり前よね。そういう意味では寄席に慣れている人がミュージカルを観に行ったら、多少なら音を立てても問題無いと認識していたり、うっかり携帯の電源を切り忘れる人がいてもおかしくないかも。
注意でいうと定席内に掲げられた注意書きには「撮影禁止」と「飲酒禁止」が書かれており、劇場では注意するまでもない注意で印象的だった。もっと言うと「飲酒禁止」においては文字の下に赤で二重線の強調が入っていて笑った。
築100年を超えている末廣亭
1921年に開館したという末廣亭。
たくさん書かれた出演者の名前の書体にテンションが上がる。寄席文字と言うらしい。この書体が出ているだけで、前を通る人の興味関心を惹くと思う。
内部は撮影禁止とのことだったけれど、以下の記事で内部を振り返ることができた。
椅子はクッションがしっかりしていて、肘掛けにボトル置き、荷物掛けに傘立てまで配備された至れり尽くせりの席に驚き。ついで言うと、当日は雨が降っていたから、長傘を使っている人には長傘用のビニール袋、折りたたみ傘の人は小さめのビニール袋の配布まであった。
100年前からこの設備では無いと思うけれど、ここまで設備の整っている場所は初めて。古い建物なのに凄いところ。しかし、観劇時間が長かったために中入りの前に座り疲れて、お尻が痛くなってしまったことから、人によっては注意が必要かもしれない。
そしてトイレ。洋式トイレよりも和式トイレの数が多かった。近年、稀なパターン。古い建物だからこそなのかも。
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レトロな型板ガラスが嵌め込まれた内装が見られるのは、ここの定席ならではだと思う。そして舞台に飾られた書と掛け軸と茶碗が新鮮だった。
先ほど紹介した記事にあった上記の写真と書は同じものだった。掛け軸と茶碗もおそらく同じものが飾られていたことから、いつ来ても飾りは変わらないのだと思う。
定席内には2種類の提灯も掲げられていたが、描かれた紋がまた格好良かった。側方と後方の提灯は上から赤白青とフランスの国旗を縦にしたような色合いがおしゃれだった。前方の提灯には紫の房がついており、書の額縁の受け金具に付けられた座布団も紫、引き戸に付けられた房も紫、噺家さんが座る座布団も紫で統一された美しさがあった。
寄席は落語だけじゃない
寄席って落語だけじゃなく色々なことをやるのね。今回観たものだけでも、落語、漫才、ウクレレ漫談、講談、コント、紙切りと6種類。浪曲をやる予定だった国本さんは他の場所でのご出演となってしまったようで、今回はその場所に春風亭昇也さん(下記の写真の方)がピンチヒッターに入られた。
浪曲というものにも興味はあったが、この代演に入られた昇也さんが今回の寄席の中で1番面白かったから運が良かったかもしれない。昇也さんが演られた演目は『たけのこ』。帰宅後にキーワードを打ち込んで調べたらすぐに出てきた。落語中にタイトルを言うことはしないが、落語の漫画『あかね噺』を読んで知った知識で言うと、演目は当日その場の客席の空気感で決めるらしい。演目に入る前に落語家さんたち、ちょっとした小噺を挟んでいて、それから演目に入ってた人が多かったように思う。ちなみにこの小噺のことは枕(まくら)と言うらしい。
そして寄席の間、噺をしている落語家さんたちの多くが途中で羽織を脱ぐことに気になっていたのだが、どうやらそれは演目に入る合図とのこと。下記のnoteを読んで知った。
1番初めに出演された桂南楽さんは羽織を着ていなかったことから、落語家の階級としては前座に当たるのだと思う。ちなみに南楽さんが演られた演目は『つる』。漫画にも出てきた演目にテンションが上がった。私の落語知識は漫画に出てきたものや絵本で読んだ『じゅげむ』、米津玄師さんの歌う『死神』程度だから、知っているのが出てきて嬉しかった。
そして今さら気付いたが『死神』のミュージックビデオは末廣亭で撮られたのね。ミュージックビデオに映る書が末廣亭に飾られていたものと同じなことに帰ってから気付いた。
1番おもしろかったのは昇也さんだけど、1番わくわくしたのは林家今丸さんによる紙切りだ。お客さんのリクエストに応えて、お喋りをしながら長方形の普通の紙が様々な形に変わっていく。しかも紙を回しながら切っていき、1回ハサミを入れるだけで9割がた完成していた。
上記の画像はご本人のプロフィール写真であるが、この手に持たれているような作品があっという間に完成していった。落語も難しいだろうけれど、紙切りもかなり難しい芸のひとつだ思う。
そして、友人の推しである桂歌春さん。落語芸術協会理事ということで、多分だけど今回出演された方の中で1番お年を召していたように思う。御年75歳。
林家今丸さんの写真は少し古いものに感じたが、歌春さんは、本当にこの写真通りの方が登場された。うまく言えないがテレビで見てた芸能人をナマで見たような感覚を覚えた。
この歌春さん、多分だけど演目無しの枕だけの落語を演りきられた。そんな形の落語もあるのかと驚いたけれど、ちゃんと面白かった。そして噺の数が多かったのだけど、今思うと噺の転換が凄くスムーズだったように思う。歌春さんの時に書いたメモを見ると枕が全部で7つ。本当にすごい。例えがあってるかわからないけれど、短編集を楽しんだような感覚だったから、もし機会があれば長編も聴いてみたいところ。
終わりに
今回、落語だけだと思って行った寄席で、先に挙げた紙切りだけでなく、他にも漫才の宮田陽・昇さんに神田蘭さんの講談、コントを演られた山口君と竹田君などたくさんのものを楽しむことができた。
いつもはミュージカルや舞台の観劇が多いけれど、日本独自の芸能を楽しむのも良いものだと実感。
せっかくだから、いつになるかはわからないけれど、今度は歌舞伎を観に行きたいと思う。
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余談。プログラムに掲載された広告がちょいちょい昔懐かしい感じでホッコリした。下の広告は昔懐かしい感じがするのに、購入はAmazonでというギャップが良い。