数字で見るアアルト大学
今回は私が通うアアルト大学について、客観的に見てどのような大学なのか、いろいろな数字を見ながら特色を見ていきたいと思います。
(2024年時点)
1. 創立
2010年
比較的若い大学です。ただルーツはとても古く、ヘルシンキ工科大学(1849年創立)、ヘルシンキ経済大学(1911年創立)、ヘルシンキ芸術デザイン大学(1871年創立)、というフィンランドの商・工・芸のトップ3の大学が統合して出来たのがアアルト大学(2010年創立)です。多くの方が書いていますが、日本でいうと一橋大・科学大(旧東工大)・芸大が1つに統合したようなイメージです。「アアルト」というのはフィンランドを代表する建築家「アルヴァ・アアルト(Alvar Aalto)」の名前で、フィンランドでの通貨がユーロになる前のマルッカだった時代の紙幣にも描かれていたそうです。
2023年に映画にもなっていますので興味のある方はご覧ください。
建築家の名前を大学名にしたということから日本に当てはめると安藤大学(安藤 忠雄)、隈大学(隈 研吾)、丹下大学(丹下 健三)あたりでしょうか。ただ、今のアアルト大学の商・工・芸の統合、スタートアップ、イノベーションの側面を考えると渋沢大学(渋沢栄一)の方が適しているかもしれません。日本もここまでやったら相当インパクトがありますね(あくまでも私見です)。
このアアルト大学への統合ストーリーは産官学民が協業して作り上げたという点で、個人的には映画にして欲しいほど魅力的だと思っているのでまた情報が集まり次第まとめようと思っています。
ちなみに最近アアルト大学の紹介動画が更新されたので是非見てください!
(数字もいくつか出てきます)
2.QS世界大学ランキング
#1
アアルト大学はフィンランド国内での大学ランキングで第1位を獲得しています。ヘルシンキ大学が伝統的にフィンランドで1位だったようですが、2018年から逆転し6年連続でアアルト大学がトップ。統合による学術・研究への相乗効果の成果などが世界的にも評価されているのかもしれません。
#8
「アート&デザイン」の分野で見るとアアルト大学は世界第8位となっています。上位はイギリスのRCAを筆頭に、アメリカの大学が続きます。ちなみにこの分野での日本の大学は東京大学(49位)、千葉大学(51-100位)、九州大学(101-150位)となっています。多摩美や武蔵美はないの?と思いましたが、おそらくアート&デザインを「学術や研究」ではなく「カタチにする」ことに重点が置かれているせいか世界ランキングでの評価には入っていませんでした。私の仮説ですが、ランキング上位の大学がある国ほど、行政や産業界の上層部のデザインへの理解が深い印象があります。この辺りが日本でのデザインの領域や応用範囲の狭さとリンクしているのかもしれません。一方で、欧米では議論が好きでカタチにするのが後回しになる、と言う話を大学時代の教授から聞いたことがあります。日本ももっと学術的な分野でデザインの価値が高まると、公共など広範囲かつ多様な領域でデザインが活用される可能性があるので、この点は伸び代かもしれません。
ちなみにアアルト大学の分野別のランキングはこのページにまとまっています。いつも個別に挙げているのが「Art & Design ( #8 Globally)」なので大学としても力の入れているのが確認することができます。
#113
QS世界大学ランキングの総合ランキングでいうと世界第113位です。日本のトップ3の大学は東京大学(28位)、京都大学(37位)、大阪大学(72位)であることを参考にするとイメージがつきやすいかもしれません。フィンランドの人口(約550万人)を考えると、教育水準が非常に高いことがわかります。
3.学部・プログラム
6
アアルト大学は6つのスクールに分かれています。
今あるキャンパス(オタニエミ)が元々ヘルシンキ工科大学のキャンパスでもあり、スタートアップの基盤(後述)にもなっていたためか、テック系が多い構成になっています。私が所属する学部の中身についてはまた後日詳しく書きたいと思います。
90
私が所属する修士プログラムの数は約90あります。学士約10→修士約90となっており分野ごとに細分化し深く研究できる環境があるのもこの数値から見て取れます。ちなみにデザインの学部(Department of Design)は学士1→修士5となっており、修士に進む場合は、分野を絞ってより専門的に深く学ぶことになっています。
4.学生
13,900人
学生数は学士、修士、博士を合計して約13,900人いる大きな大学です。各分野の割合はテクノロジー(65%)、ビジネス(20%)、アート&デザイン(15%)となっています。他の学部に所属している友人に「アート&デザインの人にキャンパスで会うのはレアだよ」と言われたことがあるのですが、確かに上記の割合を見ると確かに人数的には少数派になります。
6000人
私が所属する修士課程の学生は約6000人です。全体の約45%を占めています。日本の大学で最も修士学生が多い東京大学で約7000人、大学全体の約25%のようなので、学術研究への強い姿勢が伝わります。
30%
修士学生の海外学生比率は約30%のようです。私の所属するCoIDでは肌感的には8割くらいがフィンランド以外のイメージですが、実際の数値は30%となっていたのでプログラムによって差があるのかもしれません。ちなみに学士は9%、博士は42%となっており専門性が進むにつれて海外比率が高くなっています。日本人の多くは交換留学生で正規の学士・修士は珍しい(1-2割?)です。年齢は20代後半が多い印象ですが40代の方も時々見ます。ただ、国籍も文化も言語もバラバラなので、年齢の概念は早々になくなりました。私も30代後半でキャリア組ですが全く気になりません。皆、それぞれ興味のある分野の学びを深めている「修士学生」という感じです。
5.大学発スタートアップ
100社
アアルト大学の大きな特徴のがスタートアップが生まれるエコシステムです。毎年100社を超える企業がアアルト大学から生まれているようです。まだこの点は私自身が詳しくないので詳細はこちらの記事をご覧ください。
キャンパスにいると毎日のようにスタートアップ関連のイベントをやっています。関連する建物やプログラムが多数あり起業が非常に身近で当たり前になっているのを感じます。また学生主体での世界最大のスタートアップイベント「SLUSH」が始まったのもアアルト大学(2008年)なのでその歴史や文化も感じ取れます。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
私もまだ入学して間もないのでわからないことばかりですが、数値から見ることでアアルト大学の特徴が少しでも理解いただけたら幸いです。まだまだアアルト大学の魅力はたくさんあります。少しずつ深掘りしながら紹介していきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いします!