辛いのは、寒さより暗さより英語
フィンランドも11月に入って雪が降りはじめ、氷点下を記録する日も増えてきました。関東圏で生まれ育った私は、氷点下の気温をあまり経験したことがなく、また寒いのが苦手な体質もあり、これから訪れるフィンランドの冬をまだ想像することができません。ただ、フィンランドに住んでいる方に聞くと「辛いのは寒さより暗さだよ」という話をよく聞きます。確かに、朝は8時くらいまで暗く、夕方5時頃には真夜中のようになり、気分的にも暗くなります。11月〜12月は日照時間の短い極夜のシーズンになるので、人によってはうつ状態になる方も。その対策のために、私もビタミンDを早めに飲みはじめました。
ただ私の場合、辛いのは寒さよりも、暗さよりも、英語です。。
私生活や仕事でも英語経験ゼロ、純ジャパ30代後半で、語学留学ではない海外大学院留学は想像以上に大変です。IELTS OA6.5が入学の足切りラインであったものの、資格試験と実際の授業や生活では内容や時間軸が大きく異なります。「英語ができない」と悩んでいても何も解決しないし、英語を学びに来たわけでもない(そもそも英語圏ではない)ので、とにかく授業やディスカッションについていけるように、使える英語アプリはとことん使うようにしました。幸いこのご時世、多くの英語アプリが世の中に存在しています。改めてこのようなサービスがない時代に、語学留学以外の目的で海外で特定の分野を学んだ人たちを尊敬せずにはいられません。
今回は、フィンランドの冬を乗り切る服よりも分厚く着込んでいる?と思われるほど重装備の私が考える英語アプリ7選をご紹介します。費用はかかりますが、授業についていけず無駄にしてしまう方が損なので、自己投資と考え、さまざまなアプリに課金しています。恥を晒す部分もあるかもしれませんが、海外留学で英語に悩んでいる方の少しでもお役に立てればと思い、概要をまとめてみました(料金プランや使い方に関しては、各社サイトにてご確認ください)。
(注)こちらの記事は英語力を上げるためのものではありませんので予めご了承ください。
1. ChatGPT
もはやインターネットと同じくらい日常的になった「ChatGPT」。フィンランドに来てから精度とスピードを求めて課金をし、4oにアップグレード(3,000円/月)しました。大学でも、エッセイなどの課題でChatGPTをテキスト生成に使っても良いと正式に言われています(明らかに難しい単語を使ったり論理的におかしい部分などは、手で直す必要はあります)。ただ、ChatGPTを併用する際に大事なのは、それが「自分のためになるのか」という部分を見極めることです。世界の集合知から最適な答えを瞬時に出すのはChatGPTには敵わないので、その結果からどのような洞察が得られるのか、対象の文脈ではどんな意味を持つのか、自分のフィルターを通したアイデアは何か、というのは自分の頭で考えないと自分のものにならないので、そのバランスが重要だと思います。
また、エッセイなどのテキスト生成だけでなく、英語日記の添削にも適しています。毎日ではないですが、決められた制限時間で英語の日記を書き、ChatGPTに添削してもらっています。方法は「【完全版】Notion を使った英語学習効率化の総まとめ」が一番参考になりました。自分のためだけであれば添削サービスは不要ですね。
💰参考投資額 0円〜
2. DeepL
老舗AI機械翻訳ツール「DeepL」。ChatGPTでも事足りるとの話も聞きますが、私は併用しています。なぜなら、Macの場合は⌘+C(2回)でDeepLが起動する気軽さと、部分的におかしい(または難しすぎる)と思った部分は他の表現の選択肢から選べるのが便利なためです。無料でも5,000文字までなら対応可能ですが、私の場合は一度の翻訳量が5,000字を超えることが多いので翻訳できる文字数が無制限になるDeepL Pro(1,350円/月)を契約しています。
ただ、あくまでも「翻訳」に特化しているので、要約や書き換えなどの応用はChatGPTの方が上手になります。私はリーディングの勉強のために、難しい論文をいきなり和訳をする前に、ChatGPTに大学生でもわかる英文に書き換えてもらって理解するなど、シーンによって使い分けています。
💰参考投資額 0円〜
3. Readable
授業のディスカッションのために課題として英語の論文を読み込んでくることも少なくありません。大事なのは中身を理解し、議論することなのですが、肝心な「読む」段階で躓いたり、長い時間をかけてしまっては本末転倒です。そんな時の救世主で日本初の翻訳ツール「Readable」がオススメです。ポイントは」「PDFのレイアウトが崩れずに左右で和文・英文が見れる」ことです。DeepLでもPDFをアップロードしてデータごと翻訳も可能ですが、どうしてもレイアウトが崩れてしまい、空白のページが出てきてわかりにくくなってしまいます。また原文と照らし合わせながら確認するのもディスプレイ上ではストレスフルなので、考える作業に注力できています。ただ、頼りすぎると英語の勉強にならない(意味が変わってくるのも多い)ので、まずは原文→易しい英語or要約など段階を踏むなど、難易度や費やせる時間と相談しながら活用するのが大事です。
💰参考投資額 980円/月〜
4. otter
授業が始まった頃はレクチャーの途中で急にディスカッションが始まり、何をしたらいいかわからないまま終わる、、そんなことも少なくありませんでした。ディスカッションで話す以前に、何を言っているかがわからない、そんな状態から抜け出すために英語の音声認識AIサービス「otter」を使い始めました。音声の書き起こしサービスは他にも数多くあるのですが、ottterは認識精度が高いだけでなく、録音後に要約とやるべきアクションなども同時にまとめてくれるのも助かります。またAI Chat機能もあるので、書き起こしの英文を元に、対話できるのも便利です(日本語入力も可)。オフラインの授業の場合は、距離や声の大きさに依存しますが、zoomなどのオンラインであればとても音質は綺麗です(ただしオンラインでotterを起動するとzoom録画が併用できないので注意。一度外部との打ち合わせで失敗しました)。課金額によって録音できる時間が変動するので、状況に応じて使い分けでもいいかもしれません。私は、まだ聞き取れないことが多いので月に100時間録音できるプラン($20/月)で契約し、状況に応じて起動しています。
(注)
💰参考投資額 0円〜
5. Anki PRO
単語や表現の役に立つのがフラッシュカードを使用して効率的に学習できる学習アプリ「Anki PRO」。ポイントは忘れそうなタイミングで問題を出してくれるように設計されていることです。これはいわゆる「エビングハウスの忘却曲線」の理論がベースになっており、覚えていないカードほど出る頻度が多く、忘れにくいようになっているので、記憶力に自信がない私には最適です。連続学習日のカウント機能もモチベーションの維持には役立っていて毎日やろうと思うようになります。私の場合は、時間というより場所で決めていて、通学中や食事中などその環境になったらAnki PROを起動させて振り返るようにしています。登録する内容は授業や日常会話で参考になった単語から、論文で出てきた表現などカテゴリ分けをしています。また、単語だけでは覚えにくいので、例文の中にブランクを設け、それを答える形式が覚えやすいです。例文はChatGPTが作ってくれます。カード作成はPCで、暗記作業はスマホでやるのが良いです。
使い方に関しては英語コーチングでお世話になった脅威のIELTS8.5をお持ちの上田先生が配信しているYouTube【最強の英単語アプリ】Anki の使い方のコツとカードの作り方が参考になります。
💰参考投資額 0円(スマホ版)〜
6. Grammaly
英文校正の添削ツールでお馴染みの「Grammaly」もとても便利です。IELTSのライティング対策時以来ずっとOFFにしていましたが、留学に来てから改めて搭載しました。IELTSなどの資格試験を目的にしている際は、勝手に修正されてしまうので良くありませんが、相手に内容を正確に伝えたい際のスペルや文法のチェックは必須です。また地味に使えるのが、スマホ版「Grammarly」。「フルアクセスを許可」をオンにして、言語選択に「Grammarly」を追加することで、誤って入力した際でも正しい単語を予測して修正してくれてます。友人などとチャットでスピーディに返信しなければならない時に便利です(無料で十分対応可能)。
💰参考投資額 0円〜
7. オンライン英会話
「現地に行けば、毎日聞いたり話したりしていれば上達するだろう」と思っていましたが間違いでした。授業を受けていると意外に英語を使う時間は多くありません。9月入学でしたが、英語に全くついていけず、これはまずいと思い、翌月からオンライン英会話を再開しました。私の場合はDMM英会話を使っています。留学を機に他のサービスに切り替えようと他社の無料体験も受けましたが、DMM英会話を日本に住んでいる頃に使用していたのでUIに慣れていたことが大きく、結局同じサービスで再開することにしました。他社比較についてはわかりやすくまとめているサイトがありましたので、こちらが参考になるかもしれません(最終的には相性、好みだと思います)。
DMM英会話の難点の1つはタイムゾーンを設定できないことです。最初にフィンランドで受講した際、サービスの表示時間がこちらの時間だと勘違いをしてしまい、気づいたら終わっていました...。ネイティブキャンプの場合は、最初にタイムゾーンを設定できるので、その点は便利かもしれません。また、継続のコツは「何も考えず、同じ時間に予約をすること」だと思います。時間が空いたらやろう、と思っていると何かと理由をつけてやらないことが(少なくとも私は)多かったので、時間を固定するのがオススメです。私は朝型なので、朝4時半(サービスの表示時間は11時30分)に毎日受講するようにしています。
💰参考投資額 6,480円 / 月〜
Slowly, but Surely
ここまでくるともはや英語は全てAIなどに任せた方がいいのではないか?とすら思えてしまいますが、私はそうではないと思っています。プレゼンやディスカッションでその場で会話をしないといけないから、と言うわけではなく、そもそも人は正しさだけでは心が動かないのと同様に、機械翻訳を使った完璧な英語での人間同士のコミュニケーションでは心が通じ合えないからです。カタコトの日本語でも頑張って話してくれる外国人に親近感が湧くように、文法が多少間違っていても英語で伝えようとする姿勢も含めて、周りの人は理解しようとしてくれ、また助けてあげようと思ってくれます。実際、インドや中国などのアジア圏の人たちの英語は発音も含めて「?」となることが多いですが、彼ら彼女らはとても堂々としています。
また、ホリエモンが書籍「いつまで英語から逃げてるの?」の中で「日本語の文法の特徴として動詞が最後に来るので、いくらリアルタイムの翻訳技術が発達しても、そのタイムラグは解消されることはない」と言っていました。確かにいくら技術が進歩しても、日本語の文法が変わることはありません。その意味でも、カタコトでも自分の知っている英語でコミュニケーションを取ることは、学びに限らずビジネスの場でも重要であることは、これからも変わらなそうです。英語アプリを多用することはあくまでも手段です。目的はアプリを使いこなすことでもなく、英語力を伸ばすことでもなく、自分の持つ英語力で自分の意思やアイデアを相手に伝えること、納得してもらうこと、共感してもらうことであることを改めて感じます。
「Slowly, but Surely」。
同じプログラムにいるカナダの友人に自分の英語の出来なさを相談した時にもらった言葉です。こちらに来てまだ2ヶ月。英語ができないと言いながらも、日本にいた時の何倍も英語に触れているので、来た当初よりもできることは確実に多くなっています。英語ができないことばかりに執着せずに、少しずつでもできるようになったことを喜べるマインドに切り替え、異なる文化・文脈で専門分野を学べる楽しさとありがたみを実感しながら、留学生活を送っていきたいと思います。
今回は、英語学習に関するテクニカルな面を中心に、自分の考えをまとめてみました。海外留学で英語に悩んでいる方の少しでもお役に立てれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました!