【小説】雄猫ぶーちょの生活6 自由の定義
ぶーちょは、動物病院に行くのも去勢手術にも抵抗しなかった。おとなしく健康診断を受け、血液検査のため、小さな腕から血液も採らせた。
どうしてだろうか。
ぶーちょは、飼い主たちの会話、獣医との会話をすべて理解したのだろうか。
ぶーちょは外に出たがる。出たがるが、飼い主のすきを見て、無理やり外に飛び出すことはしない。
ぶーちょは、飼い主たちのほうから、外に出ていいよ、と言うのを待っているのだろうか。
また、ぶーちょは、夜、男の飼い主の部屋に追いやられるのが気に入らない。おやつにつられて天袋から呼び出されるが、廊下に出たすきに居間と廊下を隔てる扉を閉められてしまうと、ドアにはめられたガラス窓から、悲しい目でにらんでいる。
先住猫の縞尾のために猫ドアを解放するため、とはいえ、飼い主たちは悲しい顔のぶーちょを見るたび、心が痛む。
そこで、ある夜、おやつを食べた後も、ぶーちょをそのまま居間に放置してみた。すると、十時を過ぎたあたりから、ぶーちょがそわそわし始めた。ちらちらと、飼い主たちの顔をうかがい始めた。
そして、なんと、自分から男の飼い主の部屋に行ったのだ。
ぶーちょの自由の定義。
「従わなければならないルールでも、自ら進んで従えば、自由意志で選択したことになる」そう、面子も保たれるしね。
ぶーちょの頭の中は非常に複雑だ。