声なきこえ
その日は朝から調子が出なくてイライラしていた。
同居人ともぶつかって、気分が落ち込む。
お昼頃、流しの中には洗っていない食器がたまっていた。
落ち着かない気持ちを少しでも紛らわそうとスポンジを手に取った。
蛇口を開けて水を出した。
お皿の中に水がたまる。
ぼーっと、水のたまったお皿を前に無意識に手が動く。
でも、次の瞬間、伸ばした手が止まった。
水がたまった食器の中に、窓際の植物たちが見えた。
その瞬間、すっと、気持ちが落ち着いた。
ふっと気持ちが柔らかくなった。
また、助けられた。
自分ではどうにもならない気持ちが、「きれいだなぁ」「素敵だなぁ」って心奪われる何かで自然と落ち着く。
身の回りにはそんな「何か」が沢山あって、救われることが多い。
「大丈夫だ」って、そんな風に声をかけてもらってる気もする。
私は、日常の中でのその声なきこえを、これからも聞いて、心動かされたい。
そんなことを思った日がありました。