終わりなんだね、お疲れ様でした。
僕らライン工はドナドナの歌のように工場直通の送迎バスに揺られて駅から工場まで毎日往復している。
送迎バスは当然ながら早く乗るほど良い席に座れるので、電車が駅に着くと皆我先にと急ぎ足でバス停留所に向かう。それで先週までずっと僕と先頭争いをしていた白いトートバッグをいつも携えていた青年が昨日から姿を見ない。夜勤は基本的に人手不足でどこのチームも休みの予定を入られないので病欠か、辞めたか。
1年近くそうしていたからか、僕の方には勝手に仲間意識みたいのが湧いていた。一度も一言すら話した事は無いけれど。
長くライン工をやっているとこういうのは非常に良くある。何なら親しく話していた人ですらいなくなる。周囲の誰にも言わずに辞める人、理由不明で即日辞める人、加害事故を起こし即解雇になる人などなど。普通の職場以上に人間関係が非常に希薄でいなくなったところで「あぁ、また辞めたのか」としか思わなくなる。
高時給ではあるので人が辞めたところでまたすぐ次の人間が補充される。それこそエンドレスに。まぁそういうものか。毎日毎日同じ事を繰り返すだけで底辺ブラック企業よりは良い給料を貰えるんだから感謝しかない。
ともあれ、20代半ばと思われる名も知らない青年さん。今までお疲れ様でした。