貧乏草がハルジオンになった日
首を下げて、いかにも貧乏に苦しんでいます、って感じで、重たそうに蕾をぐったり下げている貧乏草。
子どもの頃、「この草を摘むと貧乏になっちゃうんだよ」と誰か忘れちゃったけど、お友だちに言われて、それから一度も摘んだことがなかった貧乏草。
今年は、本当にたくさんの貧乏草が我が家の周りに現れた。
私が元気じゃないから、雑草を抜くのを手を抜いていたからだなと、私は自分の病気のせいにして、家の周りの貧乏草を恨めしげに眺めた。
いつもなら、雑草はきれいに抜いて、花屋で仕入れた名前のついている花を植える。周りのお家のように。
私にとって貧乏草は雑草。要らない草。だから抜く。それだけだった。
今年は雑草を抜く元気も起きない。体調不良の日々が続いた。
貧乏草だけじゃなくて、いろんな雑草が元気に家の周りに生え出した。
小さな花を咲かせる草もあったり、クルクルツルがのびる草もあったり、結構家の周りが賑やかになった。
毎日毎日眺めていたら、なんだか愛着が湧いてきた。
貧乏草のやつ、蕾の時には、これ以上の苦難には耐えられませんって感じで首を下げているくせに、花を咲かせる時にはしっかりと上を向くんだ!
どうだ!って言っているみたいだった。なんて言われていたっていい!咲く時には上を向いて堂々とお日様をしっかり浴びるんだ、お日様から顔を背けるようなことはしないんだ!って言っているようだった。
涙が出た。
私は家の周りの貧乏草を摘んで、飾った。私は貧乏草が大好きになった。
ハルジオンって名前があることも知った。
どうだ!花を咲かせる時には上を向くんだ!絶対に上を向くんだ!お日様の光をしっかり浴びるんだ!その権利はあるんだ!どうだ!
そうだね、貧乏草。
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