第1回 うつの症状に気づく
本連載では、うつ病の経過に応じて必要な情報をお伝えしていきたいと思います。うつ病に悩んでいる方やご家族、周囲でサポートをする人たちに、ご自身の状況に沿った情報を一つでも見つけていただけたら嬉しいです。
連載の経緯について、前回書かせていただきました。
今回は主人公の橋本さんが、うつの症状に気づき医療機関を探すまでのお話です。
主人公のプロフィール
橋本さん(45歳)
居住地:東京都
家族構成:妻(43歳)、長男(15歳)、長女(13歳)
※本ストーリーは、うつ病から社会復帰をされた方々へのインタビューをもとに作成しています。橋本さんはインタビュー内容をもとに設定した架空の人物です。
会社が合併する
橋本さんは、当時ITシステム会社の営業マネージャーとして働いていました。常に営業成績上位で、会社からは将来有望な人材の一人として期待されていました。
部下に対しては厳しく指導するスタイルでしたが、面倒見もよかったので部下から慕われる存在でもありました。
そんな時、会社がグループ会社5社を1社に合併。さまざまな事業が統合されました。橋本さんは新会社でも営業マネージャーを任され、5人だった部下が10人に増えました。
病院に行く
合併されたばかりでルールも整備されておらず、現場では混乱が起きていました。橋本さんも今までと違う業務が増えて、別の会社から配属された部下の指導もしなければならず、これまでは感じなかった気苦労も増えてきました。
でも、「会社で大きな実績を上げてきた自分なら乗り越えられるはず」と自分を励まし続けました。
ただ、眠れなくなる日も増えてきたため、病院に行ってみましたが「どこも悪くない」と言われ、睡眠導入剤だけを処方されました。
「仕事のやり方になかなか慣れない」と感じていた橋本さんは、親しい部下に何気なく「慣れるのは難しいよな?」と聞いてみたところ、「いや、僕はもう慣れましたよ」と言われ、とてもショックを受けました。「もしかして未だに戸惑っているのは自分だけなのか」と取り残された気持ちになりました。
仕事に対する不安はどんどん大きくなり、不眠がひどくなっていきました。午前2時頃に目が覚めてしまうと、あとは悪いことばかりを考えてしまって朝まで眠れず、そのまま会社に行くという日々が続きました。
うつとの指摘を受け、医療機関を探す
ある日、妻から「テレビでうつの特集をやっていたんだけど、今のあなたの症状にそっくりだったわよ」と言われました。
橋本さん本人には自覚がありませんでしたし、病院に行くのには抵抗がありました。うつと診断されたら人生がダメになる、今まで評価されていた営業マネージャーの地位を失い、二度と重要な地位につかせてもらえなくなってしまうと思ったからです。
しかし、不眠と倦怠感はどんどんひどくなり、何とかしてもらいたいという気持ちもあったため、ネットで心療内科を探して行くことに決めました。
お役立ち情報
はじめて病院にかかるとき、何科を受診すればいいか、どのような治療が行われるかを悩んだり、治療費の負担が心配になるかと思います。そのようなときに、参考となる記事です。
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次回は「第2回 診察を受ける、休職をする」です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!