スタートアップはどうすればグローバルで成功できるか
先日、スタエブ("Start up Everytime”)にて「スタートアップのグローバル展開」について議論するセッションに登壇しました。主に五常・アンド・カンパニーとMUJINを主題に議論したわけですが、そのセッションの内容を踏まえつつ、改めて日本発スタートアップがグローバル展開する上での「知っておきたい」大事な点を共有しておきたいと思います。1社でも多くグローバルで価値提供できる日本発スタートアップを創出できればと思います。
初めに
私、今でこそ地理的ビジネス領域としては日本フォーカスですが、宇宙時代も、 GS時代も、グローバル競争が前提の領域でした。GSではグローバル企業かつ業界No.1企業だからこそのカルチャー、競争の源泉と「当たり前」をみてきたエッセンスも加味しながらこの投稿書いてみてます。
加えて、日本の大企業のグローバルでの成功、また苦戦、一方で海外グローバル企業の経営も見てきた観点も織り交ぜています。
そして日本のスタートアップではメルカリやスマートニュースのように日本で基盤を作ってから海外展開するパターンもあります。ただ、その裏に数え切れない海外挑戦の種があり、多くは失敗(というよりまだ飛躍し切れていない)に終わっているのも体感してきています。
国内スタートアップで設立当初からグローバル市場を狙っている具体例として、セッションのテーマであった五常・アンド・カンパニーとMUJINに加えて、当方も参画しているアストロスケール(宇宙領域)も参考になる事例かと思います。
これら諸々の観点を踏まえつつ、とはいえ発散的になりすぎないように、スタエブでの発言内容をベースにしながら、「グローバル展開する上での心得10ヵ条」としてまとめてみました。
グローバル展開する上での心得10ヵ条
これがグローバル展開する上での心得10ヵ条になります。詳細はこれからそれぞれ解説していきます。
①資本、労働、消費の3市場と向き合う
全てのグローバル企業が必ず向き合っているのが3つの市場です。どれか一つだけではダメで、どれか一つが欠けているのもダメです。その3つとは、資本市場、労働市場、そして消費市場です。
ビジネス用語で言えば、資本市場はファイナンス戦略(財務資本)、労働市場は採用・人事戦略(人的資本)、消費市場はビジネス戦略(付加価値 for 国家・ユーザー)です。
日本のスタートアップがローカルだとして、どの順番でグローバル化していくかという観点も意識すべきです。売上が全て日本国内で、従業員が全て日本人で、投資家も全て日本国籍なら全ての市場がローカルだということができます。
グローバル展開し、持続的に成長するためには、この全てがグローバル化していかなければいけません。実はこの3つは循環し、関連しています。このことを認識し、決して逃げることなく、全ての3市場に対して向き合う姿勢がなければ、本物のグローバル化は達成できないと思います。
五常・アンド・カンパニー、MUJIN、アストロスケールも、長期的に成長するためには、全ての市場がグローバル化していっているのです。これは言うは易し、決して簡単なことではありません。
資本市場において、グローバル投資家から評価を受けられるのは簡単ではありません。これだけスタートアップが世界的ブームになった今でも、一定のスケールやトラックレコードが必要です。またグローバルで競争力のある人材を獲得していくのも簡単ではありません。そして当然ながらグローバル市場で売上を上げていくことも簡単ではないのです。
この関連し循環する3つと常に向き合いながら、少しずつ量質共に引き上げていくという認識が必要不可欠なのだと思います。
五常・アンド・カンパニー、MUJIN、アストロスケールも、順番は循環の解き方には多少の違いがあれど、少しずつ各市場をグローバルに広げながら、拡大し続けていると思います。
②時間がかかる
五常・アンド・カンパニー、MUJIN、アストロスケールの3社とも、創業からかなり長い間、苦しい時代を過ごしています。それぞれ2012-14年の創業の3社ですが、本格的なグロース期を迎えたのはこの数年です。最低5年間は粘り続けなければいけませんし、フェーズが変われば、また違う粘りが求められるようになりますが、常にその期間が苦しく長いものになりがちだという覚悟が必要になります。
日本のスタートアップでもグローバル展開を口にしたり、実際に挑戦をする例は数多くあります。ただ、多くの場合は暫くして目が出ず、一旦優先順を下げる=諦めてしまいます。多くのスタートアップにとって、上記の3市場のいずれもがグローバル化せず、日本ローカルの方が圧倒的に簡単で、短期的に成果が出やすいため、そちらでまず実績を作ろうと言う風に流れていきます。
結果的に、売上(=消費市場)は日本、投資家・金融機関は日本ローカル、従業員は日本人(かつ多くは20-40代男性)となり、3つの市場がローカルに留まり、どんどんグローバルとの距離が大きくなってしまうのです。各市場のダイバーシティが極めてない状況に陥り、そこからダイバーシティを獲得していくチャレンジをしていくと考えても良いかと思います。
時間がかかることを認識した場合、ファイナンス戦略も、人材戦略も、ビジネス戦略も、長期的に破綻しない、壊れない設計や覚悟が必要になります。スタートアップで2年間は覚悟というだけでも結構しんどいですが、もっと長い覚悟が必要という意味でグローバルスタートアップの覚悟の相対的な大きさが実感されると思います。
③創業メンバーは超大事
五常・アンド・カンパニー、MUJIN、アストロスケールの3社とも、創業メンバーもしくはそれに準ずる段階で、強力な外国人パートナーが参画しています。まだ創業期といえる段階で、創業者と対等かつ強力な外国人が存在します。
理屈では必須ではないのではないか?と思う方も多いかもしれませんが、N=3とは言え、これはかなり説得力のある事実かと思います。
実際、五常・アンド・カンパニーは海外100%売上の会社ですが、今も事業の中核を担っていますし、このメンバーなしには事業が立ち上がってないわけですから、必要不可欠です。そして外国人人材ネットワークの中で、さらに強力な人材が獲得できているわけですから、最初に雪だるまの核がなければ、決して大きくならないわけです。
MUJINもアストロスケールも、専門領域の外国人人材が存在します。こちらも同様に彼らが存在しなければ、海外での事業展開も、人材獲得も進んでおらず、必要不可欠であると私は思います。
そして初期の中核外国人メンバーは今も退職しておらず、中核であり続けていることも大事であり、それだけのフィット感と実力のあるメンバーが創業者かそれに準ずる段階で参画するか否かが、その後の成長を大きく左右するように思います。
④エンジニアチームも超大事
エンジニアリングの重要性は領域によって異なりますが、特にエンジニアリングが重要になる領域ではこれは特に重要になります。もう少し広義に言えば、サービスやプロダクトの品質を決める人材が重要ということかと思います。
国内市場を狙うスタートアップでも、顧客セグメントを広げていく過程で異なるプロダクト品質、デザインが求められるケースはイメージできるかと思います。B2Bであれば、SMBセグメントから大企業セグメントへ拡大する際にも、異なる要件が求められます。グローバル市場といっても、国により、狙うセグメントにより求められる水準が異なる場合があります。まずこの水準を把握することが大事ですし、その要求水準に対応できるエンジニアリング・プロダクトチームが必要になります。
MUJINでは最初の10名のメンバーのうち、まだ7名が残っているといいます。多くはエンジニアで、今もMUJINの開発やビジネスを支える中核メンバーとのことです。
同様のことはアストロスケールでも言えます。グローバルで競争力のあるプロダクトやサービスを生み出すためには、最初からトップクラスのアウトプットが出せる人材が内製化できていないと厳しいということだと思います。
上記で3つの市場と向き合い、循環しながら徐々に成長していくという話をしました。最初の起点が多いに越したことはないわけですが、プロダクトの品質、エンジニアリング力はそのきっかけになりうるものです。一方で、他がうまくいっていても、エンジニアリング力が足りてなければ、ビジネス獲得もできませんし、デリバリーもできませんし、顧客満足度も獲得することはできないと思います(※後述する信用を毀損する)。
⑤多様性は必要不可欠な投資
五常・アンド・カンパニー、MUJIN、アストロスケールの3社とも日本であることを意識させない、グローバル組織を作っています。日本人に外国人が混じっているのではなく、国籍を意識させない組織を生み出しています。
ダイバーシティ(多様性)の重要性については、少しずつですが日本のスタートアップでも近年理解が進んでいっています。ただ、正直まだ言葉尻の上っ面で本質的な必要性を理解しているかというと私は甚だ疑問です。国内のみで急成長を遂げているスタートアップでもダイバーシティを伴ってない組織構造である実態もあり、必要かもしれないが不可欠だという理解がイメージしずらいこともあるように思います。
「なぜダイバーシティが必要なのか」と質問されて、心からその必要性を理解し、それを説明できる経営者、また従業員がどれだけいるでしょう?
ダイバーシティを上げていかないと必要な採用数が採用できなくなる?いや、そういう問題ではないかと思います。
五常・アンド・カンパニー、MUJIN、アストロスケールの3社とも、「グローバル市場で勝てる優秀な人材を集める」、シンプルにそのために当然にように多様性を受け入れています。
結果的に多様性により、コミュニケーションの効率性が落ちたり、組織制度が必要になったり、面倒なことも増えます。時間的にも、結果的には費用が増大しているという面も当然あります。
ただ、これは全てのグローバル企業が支払っている「必要経費」なのです。出張費が必要なように、グローバル化するためには、多様性に必要なコストは受け入れなければいけないのです。
そう覚悟した上で、その費用以上のリターンを、多様性の組織から生み出していくということが必要なのです。同じリターン目線でいかに費用を低減させるかという日本的な考えに留まっていては、多様性の価値は理解もされないし、その進化も発揮することはないのです。
結果的にこの多様性という「先行かつ必要投資」をしない会社は、十分な投資ができていないことになり、結果的にグローバル企業として十分な競争力も成長力も獲得できないのです。②時間がかかるでも触れていますが、成長の過程とはすなわち3つの市場でダイバーシティを獲得していくことに他なりません。全くダイバーシティがない状況からダイバーシティを獲得することは難易度を上げますし、またその状況が長期化すればそれだけ変革のコストが大きくなっていきます。
消費市場をグローバルにしていくことは自らの意図だけで簡単に実現できるものでありませんが、自らの意図でやれるものは労働、資本、そして市場の順であることを理解すれば、組織のダイバーシティを高めていくことが、結果的に売上や資金を集める際のコストを下げていくことも理解できるのではないでしょうか。
⑥やらない選択とやるべきタイミング
初期のスタートアップはとにかくやることが多い。考えれば当然ではありますが、ゼロから作っていくということは、初期はまだ何もないということですから当然といえば当然です。プロダクトもないし、組織もない。ユーザーもいない。巨大企業になるには、ユーザーを拡大したり、地域を拡大したり、領域を拡大したり、プロダクト価値を拡大したり、それに伴い組織も拡大したり、必要な仕組みを整えたり、財務余力を拡大したり、とにかく「やらなきゃ!」ということが盛りだくさんです。
だからといって、最初から全てを一気に拡大することはできません。なぜならリソースに限りがあるからです。
MUJINと五常・アンド・カンパニーとのセッションでも、明確に順序がありました。両者ともグローバル市場を狙っているわけですが、明確な「まだやらないこと」の選択があったと思います。五常の場合、その一つは国の展開。創業当初からグローバルの多国籍展開(将来50カ国を目指す)を狙っていましたが、巨大市場の一つであるインド市場に創業時から参入していたら、うまくいかなっただろうと回想されています。そしてある程度、事業基盤、組織基盤、財務基盤が整ったタイミングで、徐々にインド市場に参入し、新たに始まる中期計画ではインドはコア市場として積極的に展開します。
あるタイミングでは踏みとどまり(ブレーキ)、ここだとタイミングが来れば一気に加速(アクセル)する。この匙加減は意思決定としてはシンプルに見えますが、会社の成長や成否には極めて大きな影響を与えます。やらないことを明確にすることと、やるべきタイミングを見定める。このそれぞれが極めて重要なのだと痛感します。
グローバル展開という大きな風呂敷を広げて起業するわけです。大志やミッションは忘れることなく、だからこそ大きな成長のためにタイミングと選択が大事になってきます。大事の前の小時を軽視することなく、未来を見ながら今の意思決定に全力を尽くす。そのバランス感覚なしには、グローバル展開の階段を上がっていくことは難しいのだと思います。
⑦ローカルを認知し、ローカルに認知される
MUJIN滝野社長は、グローバル展開をする上で、グローバルを十分に知らずに進めてしまってはうまくいかないと指摘されています。言われればその通りなのですが、それはサービスやプロダクトを売る対象のことを理解していないことを意味するわけです。
では、ちゃんと調査してからやればいいじゃないかと思うかもしれません。そして何の調査もせずに事業展開をするスタートアップもまた存在しないのではないでしょうか。
そのギャップは「わかったつもり」にあるかと思います。調査を一定し、情報が集まればそれでわかったつもりになるのです。日本に初めてくる外国人が、日本を開設したガイドブックを一冊読み込んで、日本を知ったつもりになるのと同様です。
海外旅行をする程度ならそれでいいのかもしれませんが、他国の市場において、激しい競争がある中で、勝ち抜いていくとなると話は全く別になります。この厳しさを正しく理解していないことが「わかったつもり」を産んでしまっているように思います。
知るということは、3つの市場(消費、労働、資本)をそれぞれ理解することを意味します。売上がまだ上がっていない段階で、労働も資本もグローバル化していない段階で、果たして競争力を左右する、人材や資本を獲得し、競争を勝ち抜くことができるでしょうか。だからこそ、③④⑤で触れたようなダイバーシティやローカル人材が重要になってきますし、一気に多国籍を知ることが難しいからこそ、⑥のやらない選択とタイミングが大事になってくるわけです。
そして成功のきっかけを掴むためには、単に知るだけでは不十分です。成功のサイクルを回していくためには、「認知される」という段階が必ず必要になります。それは多額のマーケティング投資をすることではありません。どうすればローカル市場で「認知」されるのか、そのレベルを打破するために必要な、具体的な実績や、それを可能にする人材のレベルが逆算でイメージできるようになるのだと思います。生半可ではなく、インパクトを与えられる水準を目指すために、②時間がかかる、という覚悟の重要性があるわけです。
⑧軽視しがちな「信用」がグローバル価値観
3社も含めて海外事業の成長のきっかけを私が一言で表すなら「信用」だと思います。なかなか「信用」の大事さを理解するのは難しいかもしれませんが、日本よりも海外こそこの「信用」が大事だと思います。もしかすると日本では「信用」が当たり前だと感じているからこそ、その重要性を軽視したり、十分に認識し切れていない可能性はあります。
日本でスタートアップを起業する際、学歴なのか職歴なのか、その分野でのトラックレコードなのか、何らかの信用を持った方が起業しているケースが多いからかもしれません。そうすると、日本市場(消費、労働、資本)での信用を一定獲得したところからスタートできていることになります。そうすると「信用」のパワーに気がつかないかもしれません。また、支援してくださる投資家や金融機関、もしくはメディアや政府などお墨付きを得ることで、知らず知らずにうちに信用が補完されていっています。
ただ、グローバルに展開しようとすると、日本で当たり前に享受している「信用」が十分に得られていないことに気がつくはずです。日本企業はこれまでの先人たちのおがけ、また国力のおかげで一定の信用力の下駄を履いていることは大きなメリットだと思います。ただ、それに甘んじていては各ローカル市場での信用が十分にえられないと思います。
ローカル市場はローカルな信用を重視します。自らがよく知らない市場で信用を勝ち取っていることはプラスではありますが、十分だと認められないのです。だからこそ、そのローカル市場で市場シェアを高めていくことで当然信用は高まりますが、当初はそれがないわけです。そうすれば、どうやって信用を補完していくかということが重要になります。グローバル、もしくは各ローカル市場で信用力を補完してくれる、投資家の存在、また信用をもたらせしてくれるパートナー、また人材の重要性がより強く理解されるはずです。
五常・アンド・カンパニー、MUJIN、アストロスケールの3社とも、信用を拡大する最初の雪だるまの核は、信用をもたらす人材だったと思います。ローカルで信用力のある人材やパートナーを仲間に加えることで、重要なプロジェクトの獲得につながり、そのプロジェクトを通じてより大きな信用を獲得するきっかけを掴んでいくわけです。
グローバル展開を志す上で、この「信用」という価値基準を明確に意識して経営できているかどうか、単なる財務上の売上や、グローバル人材という数ではなく、目に見えない価値を明確に意識できるかが大きな分かれ目だと思います。そしてこの判断軸があらゆる経営判断をよりシャープにしていくと期待されます。
⑨100%プロダクトドリブンはあり得ないと心得る
よいプロダクトを作ればグローバルで売れる、競争力を獲得できるという幻想は抱きがちかもしれません。日本は20世紀にものづくりで世界を席巻しましように言われますから、その力の大きさを過信しがちです。ただ、20世紀の日本においても本当にプロダクトだけで成長できた企業は実はごく少ないように思います。一時期のカメラなど光学技術など他国が真似できない製造技術を有して入れば、それも一定可能かもしれませんが、それでも限定的だと思います。
B2Cにおいても、日本で大成功したモデルが海外で自動的に拡大できないことは、メルカリやスマートニュース等の例を見れば明らかでしょう。特にB2Bではより顕著になりますが、プロダクトドリブンだけでの成長はあり得ないということはまず心得た方が良いと思います。
B2Bやディープテックなどのサービスやプロダクトになればなるほど、ユーザーのニーズが日々進化していくわけです。いかにしてその中枢の議論に入っていけるかが、プロダクトを磨いていく、ビジネスモデルをアップデートしていく上で不可欠になります。
スポーツの世界でも同様だと思いますが、早い球を投げられるとかフィジカルが良いというのはスタートラインに過ぎないのだと思います。いかに競争を勝ち抜くためのルールを理解し、自らを磨き続けられるかが勝負だと思われます。
ユーザーのリアルな悩みや要求水準などを理解するためには、パートナーや有力企業として認められる必要があります。そのローカルのインナーサークルに入り込んでいくためには、信用を獲得していくことと、その信用の輪を拡大していくことが重要になります。それは決してプロダクトだけでは実現が難しく、それを可能にする人材や組織の仕組みが必要になるのです。
⑩グローバル化とは徹底したローカル化の集合体
最後にもう一つ大きな誤解があるかもしれないことを触れておきます。グローバル化するために、グローバル戦略、グローバル組織、グローバルに通用するプロダクトを作るろうとしているかもしれません。
ただ、グローバルとは1つの市場ではありません。まずそのことを誤解してしまっていますし、それではいつまで経ってもグローバル化は達成できません。
日本は島国だからかもしれませんが、自らのみがユニークで、日本と海外という捉え方をしてしまっているかもしれません。そして、日本市場で活躍する他国のグローバル企業を見て、日本のグローバル企業に一定の均質性を見出してしまっているかもしれません。
実際には、グローバル企業は徹底したローカル化の集合体です。GSもそうでしたが、米国人が働いて、米国流を主張するだけでは、日本市場で競争力を獲得することはできません。各市場のマネジメント、人材はどんどんローカル化を進めていきます。そしてローカルをマネジメントする仕組みを構築していくこと、その中で各社独自のグローバル共通にする仕組みやカルチャーを決めていくことが大事になります。
ローカル化する部分と、グローバルで共通化すべき部分を見定めていくことが大事であり、それがうまくできている企業が高いパフォーマンスを実現数ように思います。ローカルを完璧に理解し、その中で圧倒的な存在になりながら、グローバル企業としての強みをレバレッジするようなイメージです。それができれば単なるローカル企業よりも高いパフォーマンスが発揮できるようになります。
この状態を目指そうとすると、一般的にスタートアップで浸透しているような、MVVや組織マネジメント、ファイナンス戦略など、さまざまな重要テーマが重要であることは変わりませんが、⑦の各市場を正しく深く「知る」ということが極めて重要であることが理解できると思います。そして、知る過程の中で適切に、カルチャーや組織、戦略などを柔軟に再構築していけるかが問われるわけです。
これは言うは易し、極めて難しいですし、その状態を構築するために、常にそれを可能にするローカル人材、グローバル人材の登用が継続的に必要になるわけです。
長くなりましたが、当日のセッションの内容をベースに日本発スタートアップに参考になるグローバル化の心得10ヵ条をまとめてみました。他にも論点は多数あり、網羅的ではないと思いますが、少なくとも知っておくべき大事なこと、一定再現性のある事項を整理してみました。この10ヵ条が具体例を持ってさらに進化し、日本のエコシステム全体に深く広く浸透していくことを願っています。