ニュートンの頭脳は、きっとこうなっていた
数日前にとある図書室で懐かしい本と再開しました。
こういうのです。
昭和62年刊行で、筆者が振り返るに「某旧帝大生協では『ノルウェイの森』より売れた」でした。
私が本書のことをしったのはむろん昭和ではなく平成、県図書館の書庫から出してもらって、そしてああなるほど面白いわーと感心したひとりです。
第一章の線積分、面積分、全微分の積分についての解説はまあまあで、第二章ではテイラー展開について「多次元の三角錐」というイメージ比喩であの定理を視覚化していく様に「お、やるな」で、そうやってだんだんと本領発揮していく、そういう作りの本でした。
数日前、手に取ってみて、卒業アルバムをめくっていくような感覚がないでもない、そういう再会をしました。
ちなみに「ていらーてんかいってなんやの~?」な方は、検索してください。実物(数式)をここに貼ろうかと思いましたが、ティラノサウルスみたいにごっついので、実物に代わってティラノサウルスの骨格画像を貼っておきます。このくらいごっつい数式が「テイラー展開」でございます。
このテイラー展開とよばれるティラノサウルスなブツについて、くだんの『物理数学の直観的方法』は、「多次元の三角錐」がべき級数的に連なっていく(そして次元が増すたびに各三角錐が小さくなっていく)その体積の合計と読みかえて語っていきます。
本書の最初の見どころです。
今見てもとても面白いです。
しかし今の私なら、もっとスマートに語れるかなとも感じます。
別のところですでに述べたことですが頭の整理を兼ねて再度語ります。テイラー展開をはじめ、何かが果てしなく連なって全身骨格ができている様が、数学ではごくありふれたものとして現れます。
そういうのを「解析学」と呼んでいます。
この「何かが果てしなく連なって全身骨格ができている様」を、「同じ円周を果てしなく走り続ける」と読みかえると、もっと普遍的な数学理解アイテムになってくれるのではないか…前からこのアイディアを抱いています。
さらには「果てしなく波が進んでいく」と読みかえてもいけます。
この読みかえ技の土台となるのは
一次元と二次元は無限小において同格となる
です。
前にこれについてはちゃちゃっと図解したので、興味のある方はご覧ください。
これがわかれば「複素数平面」と「二次元平面」の違いがささっとわかるようになります。
二次元平面を「違うよう一次元だよーん」と強弁したのが「複素数平面」
先ほどご紹介した「一次元と二次元は無限小において同格となる」を公理(うわーい!)に置くと、上の主張が正となるのです。
これがわかれば、円について面白いイメージ理解ができるようになります。
円がわかれば π がわかります。
ということは…
そうです「i」(虚数単位)と「π」(円周率)が、性別違いのふたごさんだって直観的に呑み込めるようになるのです。
ここからさらに指数関数、対数関数との血縁についても、最短距離で理解できてしまうのです。
詳しいことは後の機会に語りなおすつもりですが、そもそもアイザック・ニュートン卿は、円の面積について研究しているときに、今の「解析学」に連なる大いなる一歩に気づいたのでした。「円」の研究です。ううん貨幣ではなくサークルのほうの「円」。
現代の解析学が、数式とその証明を見ると世にもおっかなげなのだけど、根っこは実に素朴、すなわち「円」に還元できてしまうのは、ニュートン卿がそもそも「円」の研究からこの分野を開拓していったことを思えば、ごく自然なことなのだと、私は思います。
ああ、こうも言えるかもしれない。先ほどご紹介した「一次元と二次元は無限小において同格となる」は…
円は無限小において点になる
これを公理(再びのうわーい!)に置いてしまえば、虚数も円周率もべき級数も正則関数も複素解析も、さらには多様体論までもスマートにカバーできてしまうのです。
そんな本をキンドルで世に問うてみたいな。
ちなみにくだんの「某旧帝大では『ノルウェイの森』より売れた」本、現在はブルーバックスより新装版で購入できます。キンドル版もあります。
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