スーパーマンは親無しになった
さらにミッキー誕生の10年後、「キャラクターの自律」の決定版ともいえる仮想人物像が現れた。スーパーマンだ。それまでは新聞で使われたまんがの原稿を二束三文で買い集めて商品グラビア雑誌のおまけとして収録することはあったが、1938年創刊の月刊誌「アクションコミックス」は新作掲載のまんが誌としてはアメリカ初で、その創刊号から連載された「スーパーマン」の主人公は商品化からラジオドラマ化、アニメ映画化、ほかあらゆる分野に進出した[1]。
第二次大戦中に作者コンビのひとりが徴兵され、そのあいだに出版社が姉妹作品「スーパーボーイ」を企画・連載したことが火種になって戦後に作者コンビが出版社を訴えたが、連載開始前に社と交わした覚書(1ページにも満たないものだったが)[2]を盾に社は反撃。スーパーマンは社に帰属するという判決が下された。
以後、作者の二人はその氏名すらスーパーマンとその関連作品と商品から抹消された。ミッキーマウスからウォルトの存在が完全にぬぐい取られ、企業体のものとなったようなものと考えれば、これがどれほど主客逆転的で、かつ(ことばは良くないが)画期的な転換点となったか、イメージできるのではないか[3]。