小6の英語教科書に目をとおしてみたら(1)
今回より小6教科書の分析にかかります。小5ぶんの分析はこちら。
分析に入る前に、小5ぶんにじっくり目を通してみて感じたことを述べます。保護者にすれば、いったい何を学ばせようとしているのかつかみどころのない教科書だろうなーというところです。
旧来のもの、つまり中1スタートのカリキュラムであれば「ああ be 動詞のデビューね」「ここで一般動詞がデビューか」「三人称単数での活用が出てきたな」という風に、教科書の後ろにある階段が、じーっと眺めていれば見える、見えるひとには見えるので、保護者にすれば少なくともノスタルジーに浸るぐらいのことはできたと思います。
しかし小学校英語はそうはいかない。中1スタートの英語とは何か違う階段構造になっている、そのうえその階段がどうもつかみにくいのです。そのため小5のわが子わが孫より「おばあちゃんここわかんない」と訊かれて「ああこれはねー」と手伝ってあげたくてもできないのです。
英語への苦手意識を抱く小学生が増加傾向にあること、そして中学に進むと英語の成績について得意と不得意の二つのピークが生じている、いわゆる二極化が見られるそうです。
小学校で習うことぐらいなら保護者がその基本ぐらいは手伝ってあげられるか、少なくともそういう余裕心があったと思います。ところが今では、中学で習うことがらだったものを小5より教えていくカリキュラムに改まり、保護者がそれに付いてこられないでいる、付いてこられたとしても、教科書をみてもいったい何を生徒たちにこの教科書は習わせようとしているのかつかみどころがない内容なので保護者がとまどってしまっているように思えます。
どんな分野においても、子ども市場を左右するのは、保護者が子に買い与える/子が自分のおこづかいで買っているかの違いだといいます。例を挙げるとハードカバーの少年少女文学全集の類は前者で、つばさ文庫の類は後者ですね。小学校英語は、保護者が学習のサポートをしたくてもどうやっていいのかわからない、つまり「買い与える/自分で買う」の比喩でいうとその中間的な位置にあるように思えます。
英語嫌いの小学生増加は、そのあたりに原因があるのではないかなーと考えてます。
以上、長めの前振りでした。小6ぶんを見ていきましょう。
表紙をめくってみましょう。
右ページで、中学校の存在を意識させてきています。ずいぶん大柄な中学生ですこと。小学生から中学生はこのくらい大きく見えているということなのでしょうか。
Unit 1 です。「ぼくたちちきゅうっこさ」攻撃です。
これ、私の想像ですが日本の中学英語の伝統芸「なんちゃってインターナショナルスクール」への伏線です。
想像ですよ。
おとなになってから中学英語の思い出話で盛り上がること、よくありませんか。「日本の中学校に、なんでガイジンの同級生があんなにいるんだ?」「学ランとかセーラー服、ぜったい着てないの」「ガイジンの先生に教わってたりしてな」とか。
ああいうのを私は「まぼろしインターナショナルスクール」と呼んでいます。平成期に中学英語教科書にまん延して、今やデフォです。どうしてああいうものが定番化しているかというと…話すと長くなるので今はしません。とにかくああいう世界が中学英語では繰り広げられることになるので、小学校のうちにしっかりそういうものへの耐性を付けておいてねってことなのではないか、と想像します。想像です。これから順に小6教科書を分析していくので、この想像というか仮説がどこまで当たっているか、次第にはっきりしてくると思います。
やはりつかみどころのないおけいこです。小5でそういうのすでにやってるんじゃないの?と一瞬思ったほどです。
しかしよーく見ると、何かニュアンスが違います。小5での英会話おけいこは、あくまでままごと的なもので、そこには「I」(私)の存在感はあまりありませんでした。
小6のこの単元では、もっと主体的な「I」になっているのを感じます。
このことは次のページを見るとわかります。
小5では「えみりー」とか「さっかー」とか、つまり名詞に重点が置かれていました。ところが小6のここでは、名詞ではなく、主語&動詞の理解を促すようなデザインがされています。
「I'm」とか「I like」とか「My birthday is」とかにマーカーがひかれていますね。
小学校では動詞とか主語とかの文法用語を使っては教えないようですね。そういえば国語のほうでも「主語」と「述語」ぐらいでしたか文法用語を使うの。国文法は中1から習うことになっているし、英文法もそれ準拠ということで、小学校英語では「動詞」という用語を授業では使わないようですね。
うむむ、こんな基本的な文法用語も使うの御法度となると「be 動詞」と「一般動詞」の違いを教えていくことも叶わないことになります。
そういうわけで、下のようにかなりおおざっぱな例示に留めるしかないと、そういうおとなの事情のようです。
右ページを見てみましょう。
「I」(私)が小5のときより前に出ています。
対話ごっこではなく、自己主張です。「動詞」という概念を意識させるためのおけいことみます。
社会科コーナー。小5は日本ばんざいでしたが小6では世界ばんざいでいく模様です。
その2に続く!