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ぼくが数学オリンピックに出ろってか、ワトソン君?
こんな問題です。
J君が九九の表に載っている数(1以上9以下の数2つの積として表される数) の中から5個を選んだところ、いずれも2桁であり、一の位または十の位に 0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9 がちょうど1度ずつ現れていることに気がついた。 J君が選んだ数のうち、一の位または十の位に5が現れるものを答えなさい。
ただし、2桁の数として十の位が0であるものは考えないものとする。
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問題文の意を読み取るのでもはや大変なので、とっとと解き方をお見せします。以下の九九の表をご覧ください。
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ここからですね、同じ値のものは消していって、それぞれひとつ残していきます。

おおいきなりすっきりしてしまいました。せっかくなので、同じ数字の組み合わせのものも、順に消していって、それぞれひとつ残していきます。
たとえば「24」と「42」があったら、どちらかを消して、ひとつにするのです。

ああそうそう、一桁のものを消すのを忘れてた。
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これで21個のマス目が残りました。
ここで問題です。この21個のなかから、五つ選んで…
0,1,2,3,4,5,6,7,8,9
以上の10個の数字が、すべて揃うようにしてください。
*
答えを先に言ってしまうと、「49」「27」「18」「30」「56」の五つを選べば…
49,27,18,30,56
すなわち
0,1,2,3,4,5,6,7,8,9
が揃います。
どうやって「49」「27」「18」「30」「56」の五つを選び出すのかというと…
最初に「9」を探してみることです。
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「49」マスにしか「9」が出てこないのは、目で追えばすぐ気づくと思います。
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ということは「4」「9」については、この「49」でカバーできるので、ほかのマス目で「4」と「9」が含まれるものについては、自動的にお役御免となります。「9」は上の「49」にしかないけれど、「4」はほかにいくつかのマス目にも出てくるので…
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それらを消し去ると…
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「9」と「4」がこれで一掃されました。次になすべきことは、上の表のなかで、一回しか出てこない数を探すことです。探してみてください。
これです。「27」マス目にある「7」です。「7」はここにしか出てきません。
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ということはこの「72」がこの「7」といっしょに、「2」もカバーするわけです。そういうわけで「7」と「2」があるマス目を特定して…

すべて消してみましょう。
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だんだんすっきりしてきました。ここでまた同じ作業に入ります。上の表で、一回しか出てこない数はなんでしょうね?
「8」ですね。
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これで「18」のマス目が消せて、それに伴って「1」の含まれるマス目も消せます。
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こんな風に。
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そしてまた同じ作業です。一回しか出てこないのは「0」ですので…
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「30」とともに「3」が消せて…
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残るは…
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「56」さんが残りました。
以上の絞り込みを順に振りかえると「49」と「27」と「18」と「30」と「56」の五つで、0から9までのすべての数がカバーできるということになります。
この問題、最初は整数問題と思いました。素因数分解して解くのかなーって。
しかしこうやって九九表を書き出して、こういう風に候補を絞り込んでいくと、機械的に答えが出るのですね。整数論ではなくて、代数ですこれ。ある一定のルールに従って回る、演算の体系。
これって何かに似ていると思ったら、シャーロック・ホームズの暗号解読ですわ。
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アルファベットにそれぞれ対応した、変な人形(ひとがた)絵の連なりを、頻度から「これはたぶんE」「ということは、これはTHEだろうからTとHに対応するのがこの人形だ」と、すべての人形にABCを当てはめて完全解読し、今度はそれを使って犯人をおびき出して捕まえるという、あのお話です。
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この数学五輪予選問題は、数学の問題というよりは、九九表を暗号表に見立てて、ある素朴な暗号を解いてみろってことです。「5」はどんな数字といっしょに現れるかなワトソンくん?みたいな。
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「・・・6だねホームズ」
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見事だ、それでこそぼくの相棒だよ!
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[追記]九九表でなくても同じ問題を作れます。詳しいことは後の機会に。