「メグはラグビーが好きなの?」
これの続きです。
びみょーな会話文です。どこがおかしいかわかるかな?
前のページで、この女の子メグは、自分がオーストラリア出身だと自己紹介しましたが、シドニーの出身とは述べていなかったと思います。
しかし左側の子は、唐突に彼女に問いかけてくるのです。
Are you from Sydney?
(出身はシドニー?)
いえ別にいいのですけど、もし私がどこか日本国外に留学して、同じクラスになった誰から「お前トーキョー人?」と問われたら、多少戸惑うと思います。
しかしながらメグは戸惑わないのですね。
Yes, I am.
(ええ、見てのとおり)
「見てのとおり」と訳したのには訳があります。仮にもし、メグのお腹が大きくて、級友から「おめでた?」と尋ねられたら、きっと彼女は「Yes, I am.」(ええ、見てのとおり)と笑顔で答えてくれるのでしょうが、シドニーの出なのかどうか、どうやったら見た目でわかるというのでしょう?
Err, yes. Why?
(え、そうよ。いきなりどうして?)
こう答えるのなら、自然な会話になります。
これを受けて、カイトくんがこんな風に話を続けていくと、とてもスマートなやり取りになるのですが。
I'm a rugby fan.
(ぼくはラグビーが大好きなんだ)
オーストラリアはラグビーの国で、そこの首都であるシドニーはとりわけラグビー熱が高いことを知っていれば、あるいはこのページの端っこに脚注でそう挟めば、この後こんな風にこの男の子は話を進めていけます。
Do you like rugby ?
(ラグビーは好きか)
メグはそんなにラグビー好きではないようなので、こう答えるでしょう。
No, not so much.
(ううんあんまり)
しかしカイトくんはめげずにこう続けるかもしれない。
Do you like cricket?
(クリケットは好き?)
今度はのってくるでしょう。
Yes. I'm a cricket fan.
(ええ。クリケットは大好き)
*
しかし実際の会話テキストは、少々ぶっきらぼうというか、ごつごつしています。
シドニーの出身なの?
ええ、見てのとおり。
ということはラグビーのファンか?
まさか、違うわよ。私はクリケットのファンなの。
英語ネイティヴには、こんな風に見られると思います。
シンジく…ではなくてカイトくんよく聞いて。あなたは今「So」をいきなり使ったわね。
*So*, are you a rugby fan?
(*ということは* ラグビーのファン?)
大阪から転入してきた子に向かって、いきなり「ということはタイガースのファンか?」と訊いたりはしないでしょ。
それと同じで、オーストラリア人の級友に向かって「シドニー出身?」とか「シドニー人ならラグビー好きだよな?」とか、畳みこむようにして問い掛けるのって、どうかなーって思わないかな。
ああそれから
No, I’m not.
(ううん、違うわよ)
はかなりキツく聞こえるので、いくら同級生が相手でも、いきなりこんな風に返事したら「まさか。私そんなにマッチョに見えてる?」と取られかねないので、避けるが吉です。
そういうわけで、このページの英語テキストは、少々難ありですね。
以下は、私の手で整えたものです。
せっかくの機会なので皆さんどうか覚えておいてください、初対面の相手との距離を縮めていくには、相手に「Yes」と言わせるような話題を、順に振っていくことです。
それからなるべく「No」で返事を済まさないようにするのが英語の気配りです。どうしても「No」と答えないといけないときは「No, not so much.」(ううんあんまり)と、柔らかく応じてあげましょう。
[続く]