ノーベル物理学賞(2024年)をクールに語ろう! その8
その7からの続きです。今回のお題はボルツマンマシン。
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数式を使わないで語れというご注文…をいただいたわけではないけれどいただいたつもりで以下語っていきます。ううう・・・
今回もこの図を使って説明します。
前回説明したホップフィールド・ネットワークは、どんな組み合わせを入力しても、最後にはある組み合わせに収束するのが特徴でした。
それはつまりネットワークのなかにある一定の組み合わせパターンが記憶されているということです。
どう記憶するかというと、人間さまが事前に仕込むのですよ。前回お見せした、こんな風に。
しかしもし、人間さまがいちいちケーブルをあれこれつないで記憶回路を作るのではなく、機械がこの回路を自動的に作ってしまうのならば、そのほうがラクですよね。
それが今回ご説明する、ボルツマンマシンという仕掛けです。
ホップフィールド・ネットワークを復習しまひょ
前回はあえて触れなかったのですが、このネットワークには、ノード(○)が五つある場合は記憶パターンを二つ仕込むことができます。
例えば {1, 0, 0, 0, 1} といっしょに {0, 1, 1, 1, 0} を記憶させることができます。
そして、仮にこのネットワークに何か組み合わせを放り込んで、スイッチを何度かオンにすると最終的に {1, 0, 0, 0, 1} (記憶されたパターンその1)に収束するし、違う組み合わせを放り込んでスイッチを何度かオンにすると、今度は違うパターン(記憶その2)に収束します。
どっちに収束するかは、近い組み合わせの記憶パターンのほうです。
これがホップフィールド・ネットワークにおける記憶の発露です。
もし○が五つでなくてもっと多ければ、多いほど記憶できるパターンも増えていきます。
しかし、こんなにノードの多いブツに、人力で {1, 0, 0, 1, 0, 0, 1, 1, 1… 0, 1, 1} とか記憶させていくのは超めんどくさいです。
記憶させるにあたって、縦横五つの行列どころか 50 とか 100 とかもっとぎょうさんある行列を、いちいち事前に計算して用意して、ブツのネットワークにいちいち仕込んでいくのは大変です、めんどくさいです。
ミート・ザ・ボルツマンマシン
一番いいのは、ネットワークが自動的に学習してくれることです。
こんな空想をしてみましょう。「ボルツマンマシン」と名付けられたマシンがあって、それにはこんな目玉が付いています。
この目玉に向かって、100枚の絵を見せていくのです。100枚のうち50枚は、こんな絵。
残る50枚については、こんな絵。
見せる順番はどうやってもよくて、しかし100枚のうち50枚と50枚が、それぞれ以下のものを見せていくわけです。
そうすると、ハルきゅう…ではなくてボルツマンマシンくんは、自動的にこういうものをこしらえてですね…
そしてネットワークのなかに、この二つを記憶してくれるのです。
100枚と私はいいましたが、別に10枚でも98枚でもいいです。そこそこの回数である偶数(2で割り切れる自然数)であれば。
それがボルツマンマシンです。ホップフィールド・ネットワークに学習能力を具えたものとイメージすれば、イメージできると思います。
ボルツマンマシンはホップフィールド・ネットワークの上位機種
ああそれからいうまもでなく、ボル妻伸…ではなくてボルツマンマシンのノード(○)に「0」や「1」をてきとーに放り込んで、スイッチを何度か押すと、記憶されたパターンのどれかに収束します。
そこはホップフィールド・ネットワークと同じです。
ほんとうは原理的に微妙に違うところはありますが、説明しだすと長くなるので省きます。
ホップフィールド・ネットワークに自動学習能力をそなえたのがボルツマンマシンだと、そう考えてくださっていいです。
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次回、制限ボルツマンマシンについて解説します。つづく。