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ノーベル物理学賞(2024年)をクールに語ろう!

あのホーキング教授が本を書きおろすことになったとき、知人(編集さんかな?)からこう言われたそうです。

「方程式をひとつ増やすと、売り上げは半分ずつ減っていく」

マシリト鳥嶋が仏に思えてしまうようなこの冷徹な忠告を、教授さまは半分受け入れました。半分です。「ひとつは使わせてもらうよ、こいつを」


ここで問題です。序章で彼は「この方程式は使わせてもらうよ」と宣言しましたが、その後この式は何回この本に出てくるでしょう?
.

答えは…

3回


Google Books で書籍内検索を何度か試してみて $${E=mc^2}$$ のお姿が拝めたのは、わずか二回でした。


実はもう一回出てきますが Google Books の検索ではプレビューできなかったのでお見せできませんでした。

偉いものですスティーヴン、つまり潜在売上の減少を八分の一で食い止めたことになります。半分の半分の半分だから八分の一。全世界でおよそ 1000万部。一度も $${E=mc^2}$$ を使わなければ 8000万部売れたのに、あはは。

「いやーアキラトリヤマに成り損なったよあっはっは」


ここから本題です。先日、王立科学院より、今年度のノーベル賞受賞者が発表されました。物理学賞には、現代AIの、ある重要な原理を打ち立てた二人が選ばれました。

ニュース画像や解説はどっさり流れましたが、委員会からの公式発表記録に実際に目を通された方は、あまりいないと想像します。

私はひねくれものなので、目を通しました


おっかなげな数式がいくつ出てくるのかな~と数えてみたら…

合わせて四つ(つまり四回)でした。


実は文中にもちらちらっと、それっぽいのが見えます。こういうの退いてしまうんですよね愚かな大衆の皆さまは。ふっ。


ひとつずつ数式を見ていきましょう。

この $${h_i∑_{j≠i}w_{ij}s_j}$$ なる式は「総入力」(total input)といいます。

ニューロン(神経細胞)が受け取るすべての入力信号を合計したものです。


順に見ていくとですね、ここにある $${s_j}$$ は、よそのニューロン($${j}$$ と名付けておきませう)から入ってくる信号を $${s_j}$$ と記したものです。


下の図に $${s_j}$$ とありますね。


ここで式に目を戻すと…

左隣(黒で括ったところ)にある $${w_{ij}}$$ は情報 $${s_j}$$ が、次のニューロン($${i}$$)に伝達される際に、その強度を調整する弁です。調整弁。

「重み」(weight)と呼ばれています

結合強度(coupling strength)のほうが直観的に分かるのですがこれだともろに物理学用語なので、情報理論のほうでは「重み」と呼んでいます


「重み」という調整弁を介して、ニューロン$${j}$$ からの信号が ニューロン${i}$ に渡る際に、増減される様を表しています。


以下に $${j≠i}$$ とありますね。同じニューロンに信号が(直に)戻ってくることはないよーという宣言です。


それからここ。$${h_i>0}$$ であれば、次のニューロン $${i}$$ に信号「1」が渡り、そうでなければ「0」、つまりニューロン $${i}$$ には信号がいかない。


図で説明したほうがいいかな。ニューロン $${i}$$ に他のニューロンから信号が(念押ししますが $${w}$$ によってそれぞれ値が調整されています)送られ…

その合計 $${h_i}$$ が 0 より大きければニューロン $${i}$$ の値 $${s_i}$$ は「1」に、そうでなかったら「0」と設定されています。


要するに二進法で回る関数だってことです。実際のニューロンの振る舞いを単純化したものですが、集団的な動作や記憶のパターン認識を理解するにあたっては、非常にわかりやすいモデルです。

それから $${w_{ij}=w_{ji}}$$ と裏設定されていますこの関数。いわゆる対称性ですね。生物のニューロンはたいてい非対称なのですが、モデル化にあたっては対称と設定しています。そのほうが全体の見渡しがいいのと、計算がラクになるから。

ニューロンとニューロンを結ぶ電線を(二進法準拠で)数式化すると、こんな風になるねんと、そういうことです⇩


実はこれは元ネタがあります。フランスのピエール・ワイス(Pierre Weiss)による、磁性体の研究です。1907年。

「やあどうも」

熱によるエントロピーの増大とともに、スピンがある温度以上になると向きが無秩序になる…そういう研究です。


これを人工ニューラルネットワークに応用してまえ!と生まれたのがこれです。1982年。先ほど解説したものです。


ジョン・H・ホップフィールド(John J. Hopfield)によるアイディアです。今回の受賞者のひとりです。1933年7月生まれですので、91歳です。くだんのアイディアは49歳のときのものということになりますね。

「うれしいね」


これで四つの数式のうち、一つについてはざっと説明しました。残るは三つ。[⇩ 押してね


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