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深海のアマデウス・モーツァルト

私もびっくりしました。まさかあのまんがを実写映画化しようなどというもの好きがいるとは思いませんでした。

潜水艦の天井はもっと低くない?とか、艦長室のなかをカメラがこんなまっすぐ前進はできないんじゃない?とか、海上自衛隊潜水艦部隊全面協力ってことは脚本の検閲を受けているのと同じだから怪獣映画の枠を今回も越えられずに終わるのかな、とかいろいろ脳裏をよぎったりもしたのですが、ひとつだけおおっと思ったことがあります。モーツァルトの遺作「死者のためのミサ曲」のなかの一曲「怒りの日」が使われていたことです。この曲は映画の予告編でときどき耳にします。邦画では『陰陽師』予告編での使われ方が印象的でした。うろ覚えですが使っていたような記憶があります。

ツイッター検索しても、この選曲について踏み込んだ論評をほぼ見かけないのが不思議だったので、手短に語ってみます。この「怒りの日」はこんな歌詞です。

Dies iræ, dies illa
solvet sæclum in favilla:
teste David cum Sibylla

Quantus tremor est futurus,
quando judex est venturus,
cuncta stricte discussurus


ラテン語です。キリスト教にある終末思想を歌ったものです。この詩は聖書にはなくて、詩として語り継がれてきたものです。

怒りの日、それは
ダビデとシビラの預言どおり
世界が灰燼に帰す日

審判者現われ
すべてが厳しく裁かるる
その恐ろしさ、いかばかりか

ヴェルディもやはりレクイエムでこれを使っていますね。ベルリオーズなど、レクイエム(死者のためのミサ曲)ではないけれどそれっぽい曲でこの詩が歌われてきました。終末ものの映画やアニメ(の予告編)でも何度か使われています。

この歌詞は有名なので、この予告編で耳にしてピンときて語り倒すひと続出でしょうねと思ってツイッター検索したらほとんど見かけませんでした。この歌が引用されるということは、ニューヨーク沖まで迫った日本のスーパー潜水艦が核ミサイル発射したとの報に、市民が完全にパニックに陥るあの911を予言したかのごとき魔神な展開は、おそらく期待できないだろうとみます。いわゆる「楽曲負け」。今度の自衛隊映画も、日本の領海内でのドラマに終わるのだろうなって。

そもそも観に行かないし。



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