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『固有値30講』を今の私が学びなおすと(その3)

その2より続く。『固有値30講』は線型写像の話から、次第に線型作用素に軸足が移っていきます。

この軸足移しを務めるのが、内積のお話です。第8講「内積」→ 第9講「正規直交基底」と進み…

第10講「射影作用素、随伴作用素」から作用素が主役になっていく構成です。

続く第11講「正規作用素」で、量子力学への渡り廊下となる、エルミート作用素が紹介されます。

ここ、読んでいてこんがらがります。

エルミート作用素の説明を読んでいくと、前講(第10講)で習った随伴作用素そのものに思えてきます。

しかし何か違うようです。

著者はその点については語ってくれません。

そこで ChatGPTさまにお伺いをたててみると…

「エルミート作用素は、随伴作用素そのものやなくて、ある条件を満たす随伴作用素やねん。自分自身の随伴作用素とふたごという条件や。そやから自己随伴作用素いうねん」
.


志賀先生は、誌的なことば遣いと数学史への豊かな理解がおありで、それが著述に味わい深さをもたらしてくださっているのですが…

話がさくさく進んでいくあまり、少し前に語った内容と、新たに登場する内容が、どういう風に絡んでくるのか、どこが違うのか、いちいち語ってくれないところがあります。

ChatGPT は訊ねれば、打って響くようにして答えてくれます。たとえば

「自己共役作用素と自己随伴作用素はどう違う?」と入力すると、

「数学的には同じものを指します」と答えてくれます。
.


こんな指摘もしてくれます。

  • 自己共役作用素という言葉は、物理学や数学の分野によって異なる文脈で使われることがありますが、通常は自己随伴作用素と同じです。

  • エルミート作用素という言葉もよく使われますが、こちらは通常、有限次元の複素数ベクトル空間上の行列に対して使われることが多いです。エルミート作用素は無限次元ヒルベルト空間における自己随伴作用素の特別な場合と考えられます。

二つ目については『30講』の後半になって説明されます。いいかえれば後半戦にならないと説明してもらえないのです。


作用素論は、用語のひとつひとつが有機的に絡み合うので、順に学んでいくたびにその絡みぐあいをいちいちチェックしていかないといけないところがあります。

(新しいことをひとつ教わるたびに、神経網もこんな風に複雑になっていく!)


つづく


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