リオ五輪の「君が代」はどうして美しかったか
⇧「君が代」原曲の分析を済ませたので、リオ五輪閉会式で奏でられたものの分析に進みます。
前にやってるじゃん、とツッコミを入れたくなるその気持ち、よーくわかりますが、原曲分析後に再挑戦することで、前にはつかみ切れなかったものが今度は拾っていけるかなーと思うので、これより順に再検討していきます。
ラ・レ・ソ和音ですねこの小節。四度堆積和音。
旋律が「レ」でなく「ド」になるとき(下の緑部分)は ラ・レ・ソ ならぬ ラ・ド・ミ・ソ(から「ミ」が除かれる)和音で…
ラ・レ・ソ和音にいったん戻って…
ここで再び ラ・レ・ソ ならぬ ラ・ド・ミ・ソ和音に。(今回は「ド」が除かれる)
全体としては ラ・レ・ソ和音が ラ・ド・ミ・ソ和音にときどき針が振れる感じの作りです。
続く小節も ラ・レ・ソ和音(念押ししますが四度堆積でできてます)でスタートですね。
ここでは ラ・レ・ソ が ラ・ド・ミ・ソ(から「ド」を省いた)和音になっています。ひとつ前の小節で使われたのと同じ技です。
ここ、旋律が曲冒頭と同じ「レ」です。しかし和音は ラ・レ・ソ を含みながらも withド です。ラ・レ・ソ和音基本に、その血縁者的にこれまで使われてきた ラ・ド・ミ・ソ和音が重なっていると解せます。「ミ」は抜いて。
原曲はどうかというと、和声はなくて、♪き~み~が~あ~よ~お~わ~♪ まではソロです。
往年の帝王カラヤン陛下による御演奏で聴いてみましょう。ユニゾンで奏でています。どの楽器も同じ旋律を奏でているのです。原曲がそうなのだからそうせざるをえない。
続きを見ていきましょう。
ここは シ・ミ・ラ・レ和音(四度堆積してます)。どうして「レ」が鳴るのか、分かりますか。ここですでにG長調に転調しているぞーとさりげなくアピールするためだとみます。
ペンタトニック(五音音階)がドレミファソラシドのなかに三種類あるという話を、私は過去に何度かしました。「ラ・ド・レ・ミ・ソ」と「ミ・ソ・ラ・シ・レ」と「レ・ファ・ソ・ラ・ド」の三つ。それぞれをC長調(=A短調)、G長調(=E短調)、F長調(D短調)と見立てることも可能だよと。
この見立てを使うと、ここは「ミ・ソ・ラ・シ・レ」音階つまりG長調(=E短調)と解釈して、さらに シ・ミ・ラ・レ和音 と解釈できます。この レ は「ミ・ソ・ラ・シ・レ」音階だとさりげなく強調するために付けられたものと思われます。
「それだったら ソ も鳴らないといかんやんけー」とツッコミをいれたくなるお気持ちはよっくわかりますが、このアレンジ版は四声ですので、四つまでしか音を出せないのです。
大丈夫、次で「ソ」が出てきます。
レ・ソ・ド和音です。四度堆積してます念押ししておきます。「レ・ファ・ソ・ラ・ド」音階の構成音です。ということは、ここはF長調(=D短調)とも取れそうです。ひとつ前がG長調(=E短調)で、ここではF長調(=D短調)に調性が揺れる。
揺れるといっても、譜面上はC長調(=A短調)のままです。ままでGに触れたりFに振れたりしているのです。
ここは シ・ミ・ラ(四度堆積)和音 with ファ。ファがあるのでC長調(=A短調)です。シとファで増四度音程が生じています。「ソ・シ・レ・ファ」和音ならC長調のドミナントセヴンスですが、シ・ファは残して他は違う音を使っています。シ・ミ・ラ(四度堆積)和音 with ファ、と。
ここは ミ・ラ・レ・ソ(四度堆積)和音 ➱ シ・ミ・ラ(四度堆積)和音 with ファの進行かな。全体的にG長調寄り。後者の和音は再登場ですね。上(上です上)で分析したものが再登場しています。
見ての通り、同じ音列です。
ここはそうではないのは面白いですね。
続きはどうかな。おっと黒鍵さんが乱入してきたぞ!F♯さんです。ということはもうはっきりとG長調に調性が歪んでいます。ド と ファ♯ で増四度音程が生じているのも要チェック。
ちなみにド・レ・ミ・ファ♯ の音列…全音間隔ですか。
シ・ミ・ラ(四度堆積)和音 with ファ。シ と ファで増四度音程が生じています。C長調。
ミ・ラ・レ・ソ(四度堆積)和音。譜面上はC長調なんだけど響きはG長調寄りになってる。
おっとここで黒鍵が二つ鳴っています。ファ♯ が ファ に戻って、入れ替わりに ミ と レ がそれぞれ半音下がって黒鍵化し ミ♭ と レ♭ に。A♭長調の響きです。F長調がA♭長調に捻じれてる。(レ♭と ソ で増四度音程が生じているのも要チェック)
ちなみに原曲では、この小節はC長調の体裁でG長調寄りですが、このアレンジ版ではG長調→C長調→G長調→A♭長調と、より過激なことをなさっています。
ひとつ前の小節についても触れておくと G長調→C・F・G長調→C長調→F長調 に調性の針が振りまくりです。ギンギンにロックだぜいっ。
通しで聴いてみましょう。