Like Exploding Stones / Kurt Vile


手作り感のある音だなあ、と感じてみた。ひと昔前まで、いわゆる自主制作盤みたいなものは音がチープで、でも自主制作だからしかたないよねー、でもそのチープさがいいよねー、みたいな、そういうことが当たり前だった。それがいつしかジャンル化して、ベッドルームミュージックみたいなものが登場した。

よく考えてみると、今はもうクオリティの高い音質をベッドルームで作ることができる。できてしまうのに、チープさを演出する人たちは多いし、Kurt Vile の音楽はまさにその類のもの。彼は自主レーベルから作品をリリースしているので、手作り感が音楽以外の周辺事情からも溢れているし、そのことを素敵だなあ、と感じる。だけど少なくとも音楽に関しては完全に演出のひとつなのだと気づく。

たとえば最近街中でしょっちゅう流れている中田ヤスタカさんが制作した「新時代」なんかも、彼がひとりで打ち込みまくった、いわばベッドルームミュージック的な音楽だと言ってもいいのに、あの分厚いサウンドでそんなことを言われたとしても誰もピンと来ない。ベッドルームミュージックは、ベッドルームでコツコツ作ったという事実よりも、ベッドルームでコツコツ作りました感の方が重要になっている。

つまりベッドルームミュージック感をわざわざ醸せる人たちは、そういう才能に長けているということなんだと思う。俺を含めたリスナーは、そこにいいですねーと感じる。

なんなら俺が日々作っている音楽だって、同じ部類の作り方に当てはまるけど、ベッドルーム感があるかと言えば、たぶんそんなことはない。どっちかと言うと、地下室っぽいとか、そんなイメージが結びつくんじゃないかな。

音楽を聴いた時に、どんな場所のイメージが立ち上がるのかということは、その音楽の良さに直結する。そもそも Kurt Vile の音楽だって、実際はゴージャスなスタジオで作られているの可能性だってある。音がどんな空気をまとっているのかということを、家でもどこでも、もうコントロールできる時代なんだな

ついでに思ったのが、サブスクで誰もがリリースできる時代に自主レーベルだってあってもなくてもいいし、逆に言えば言いたい放題なのかもしれない。俺も自主レーベル、作ってみようかな。

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