Wish I Was You / Gina Birch
The Raincoats の Gina Birch のソロ曲。来年リリースされるアルバムから先行リリースされた曲。
一曲のなかにいちいち語りたくなる要素が多ければ多いほど、いい曲だということになるのかもしれない。
あっさり聴こうと思えば聴ける。劇的でもない。エモくもない。むしろそういうものを一歩引いたところから冷めた目で対峙するような、ドライな具合が曲に漂う。
ただただ音楽をやっている。音楽自体を遊んで遊んで転がして転がして、それが結晶として曲になる。
ごろつきミュージシャンが「ここがこの曲の要やで」と力んで曲中に押し込む推しポイントを、いともかんたんにいくつもいくつも詰め込んでくる。だから逆にポップになりきらない。
それらのまとめ方が丁寧であればあるほど、ひとつひとつの要素は際立たず、溶け込む。この曲は歌でさえそのポジションを取る。すべての音が平等な位置に構えて、ただそこにある。かっこいい。かっこよすぎる。
俺自身、毎日曲をYouTubeに載せるようになってから、作り手としてこのことの重要性に強く気付くことになった。アイデアはやり方次第で無限に産むことができるし、無限にかけあわせることができる。
音楽を鳴らすこと、作ることに尊さなんて必要ない。やればいい。鳴らせばいいし、作ればいい。この曲はある意味でその極地にある。こんな大人になりたい。いや、俺ももう大人だけど、キッズ的目線でまだまだそう思わせてもらうことができるのは、世界の大先輩がいまだにそのスタンスで音楽を鳴らしてくれていることで成り立つ。
最近、自分で曲を作るにあたり曲の展開について考えることが多い。この曲の展開はとても自然で、でもものすごくスパイスが聴いた展開で、それもまたやっぱりあっさりとやっている。こういうことがやりたい。
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