Untethhered / PVA
ロンドンの三人組 PVA のデビューアルバムより。インダストリアルな音作り、なのにどことなく大衆に向けられている、ちょうどいいバランス感が、いいバンド見つけたぜ俺と思わせてくれる。グラミー賞にノミネートまでされてたらしいので、知る人ぞ知るということでもないみたい。
人力でやってます!感がとてもいい。そしてバンドをやっていない俺にはそれがうらやましくもある。人はビートだけで歌えるし、ビートはそれだけ偉大だということだ。
電子楽器を使っている段階で、バンドとしてはちょっと認めづらいと言うおじさんは多いけど、打ち込みで音楽を作っているとよくわかる。これはものすごく肉体的な音楽だ。コンピュータだけではなりたたない。
80年代にこういうジャンルが登場したころ、音楽家たちは人とコンピュータが共存する新しい音楽の世界にたいへんなときめきを感じていた、らしい。それから40年経った今、再解釈に再解釈が重ねられて、今この音楽は身体を使ったものに切り替わっている。
技術的なめんどくさいことを言うと、シンセベースをリアルタイムでいじくっている様子が、打ち込みのオートメーション(設定した通りに音の様子が変化するやつ)では、できなくはないけど、たぶんやっている本人たちがおもしろさを感じづらい。打ち込むなら、もっと複雑な音の展開をやりたくなってしまう。シンプルかつ大胆な音色の変化のさせ具合は、人力でやるからこそ発生するし、やっていて楽しいし、意味がある。そういうことは、ルールやシステムで構築されているあからさまにポップス的な表現方法には当てはまりづらい発想。
感覚的な話、パソコンに接続するコントローラのツマミで、同じ音の変化を指先から作ることはできる。ただやっている本人はあんまり気持ちよくない。ハードウェアシンセのツマミの重みというか、今俺は音を動かしているのだぞ!と、直感的に思える肉体性は、不思議なもので便利なソフトウェアと、それをハードウェア化するコントローラからは感じづらい。
ハードウェアだって、けっきょくソフトウェアをハードウェアにくっつけたいわゆるデジタルシンセみたいなものがたくさんあるから、パソコン用のコントローラをいじってるのと変わらない場合も多いのに、なぜかソフトではそういう楽しさを直感的に感じづらい。いずれにしても、PVA は、指先が楽しそうだし、そうじゃないとこの音楽に生まれる意味がない。
そして歌がちょうどいい。暗くも明るくも、劇的でもアンビエンス的でもない、だけどエモーショナルな感情が搭載される、ほどよい人間味を音楽に与えている。こういう歌は、うらやましい、真似したくなる。
今日のMUSICTRICAL
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